2024年6月17日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月22日

 最近のメキシコの民間調査会社の企業経営者に対するアンケート調査によれば、ニアショアリングの最大の障害は、(1)治安悪化、(2)政府の政策や決定、(3)米国・カナダとの紛争、(4)優秀な人材不足、(5)低水準のインフラと電力供給の順である。また、現地金融機関が工業団地の企業を対象に行ったアンケートでは、外資企業にとっての障害は(1)電力(の供給不足)、(2)行政手続き、(3)水資源、(4)天然ガス、(5)アクセス道路、の順で、治安問題は出てこない。

 工業団地は、各州政府がそのセキュリティの確保に努力するので治安が大きな不安材料になることはないのであろう。

 もともと、電力、水、アクセス道路等のインフラは、新規進出企業にとっての問題となる場合が多い。産業インフラに有効な対策を取らず、国家主義的なエネルギー政策や企業誘致に冷淡な姿勢をとってきた、現大統領の責任は否定できないが、それだけが、ニアショアリングの好機を生かす上での障害という訳ではない。

 以前より存在していた治安の問題、送配電網の未整備、道路インフラ不足、水不足、人材不足といった基本的問題がニアショアリング投資についても障害となっているのであり、これらは引き続き解決すべき課題である。

それでも高いメキシコへの投資

 他方、そのような状況にもかかわらず、2023年のメキシコへの海外直接投資が過去最高のレベルに達し、メキシコ政府は、国際通貨基金(IMF)が3.2%程度と予想するメキシコの今年の成長率を更に1%以上上乗せすると見込んでいることに、むしろ注目すべきであろう。これは、現大統領の政策や不作為にも関わらず、人件費や米国市場へのアクセスをはじめ、如何にメキシコが製造拠点として比較優位を保っているかを示すものである。

 今後の展望としては、来年の大統領選挙でロペス・オブラドールの後継者と目される有力候補のシェインバウムは、一応投資誘致にコミットしており、特にクリーンエネルギー重視の方向に路線を修正することも期待される。少なくとも現状よりは中央政府の取り組みが改善されることにはなるであろう。また、このニアショアリングの動きは今後10年以上継続するとの見方もあり、当分の間、メキシコ経済の追い風となるともみられている。

 とはいえ、治安問題、送配電網や輸送インフラの不足、水不足といった中央政府の責任で取り組むべき課題は、そう簡単には解決できない問題であることも間違いない。

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