2024年11月24日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月22日

 開かれた貿易やエネルギー投資への障壁が、米国および世界経済に長い間付きまとってきた。しかし、今や、インド、中国、ノルウェー、そしてメキシコが、米国のシェールガス埋蔵地域への投資を自国の石油会社に奨励し始めており、中東やロシアも検討を始めている。米国は、このような資本主義的冒険主義に取り組む国営石油会社を好意的に見るべきである。米国がそれらのプレーヤーに自国をより開放すれば、彼らは市場志向を強めるだろう。そして、国内資源への外国投資は、既に米国の国内生産に貢献してきている。

 米国のLNG輸出は、世界の炭化水素貿易を「脱政治化」するための最初の一歩でしかない。中東全体での抗議行動が劇的に示したように、現在のエネルギー経済は、石油が豊富な発展途上国において、成功した政治的に持続可能な社会を生み出していない。人々は、米国主導のエネルギー経済はより上手くいくだろうと期待している、と論じています。

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 シェール革命は、外交の世界でもゲームを変える要因であり、LNG輸出が新たなスーパーパワーの源になる、ということに焦点を当てた論説です。

 ニクソンショック以後も長らくドルが世界の基軸通貨として通用したのは、原油取引がドル建てであったからです。しかし、それが米国への信任に繋がらなかった理由は、高度に政治化されたOPECの原油価格支配にあります。

 米国の中東経済政策の根幹は、ここ半世紀におけるOPECの影響下からの脱却にありました。しかし、中東和平の行き詰まりやイスラム原理主義の台頭に見られるように、米国の外交・軍事的な指導力はことごとく低下し、OPECが原油取引をユーロ建てや通貨バスケット建てに移行する動きが強まる中で、米国は巨額の貿易赤字と財政赤字を抱え、各国の外貨準備高ではドル離れが進むなど、米国にとって、良い所なしの展開でした。

 そのような折りに、救世主のように現れたのがシェール革命です。米国が、原油輸入を減らしLNGを輸出して、エネルギー輸出大国になれば、状況は一変します。グローバル経済ではエネルギー部門が最大の主要産業であり、米国によるLNG輸出は、エネルギー分野の自由貿易体制を米国主導で再構築することを可能にし、その配分方法を新たな経済外交の武器に使うことができます。天然ガス市場で起こりうることは、石油市場にも連動して、世界の炭化水素資源地図が大きく変貌していくことになるのでしょう。そして、米国主導のエネルギー経済は、論説が示唆する通り、全世界に恩恵をもたらすと期待されます。

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