2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年1月7日

 米国発のシェール・ブームで、天然ガスが大いに脚光を浴びていますが、これに対して、FTが、11月18日には社説で、同28日には、CFRのエネルギー・環境問題の専門家レヴィ上席研究員の論説を掲載して、シェール・ブームと地球温暖化対策の調和を図る必要があると指摘しています。

 まず、社説の要旨は次の通り。すなわち、オバマ大統領は、シェールガスやシェールオイルによって、米国は間もなく世界最大の原油および天然ガス産出国になるであろう、というIEA(国際原子力機関)の予測を受けて、温室効果ガスの排出削減を希望する旨のコメントを発した。IEAは、世界の化石燃料の3分の1以上を燃焼させるようなことは、地球温暖化による破壊的なダメージの高いリスクをもたらすであろうと予測しており、それは、オバマの懸念を正当化するものである。

 米国は、シェール・ブームから得られる、経済成長と安全保障上の短期的な利益と、温室効果ガスのグローバルな削減の長期的な必要性を調和させる必要がある。

 米国がとるべき政策の第一は、発電に用いる石炭を天然ガスで置き換えることを継続するよう奨励することである。この政策は、さらに、他の国、特に中国にも広げられるべきである。第二に、エネルギー効率を高めるように促すための規制が必要である。それは、温室効果ガスの排出削減だけでなく、米国の原油自給に向けても役立つ。第三に、引き延ばしにされている、キャップ・アンド・トレード制度あるいは環境税による、炭素への価格付けへの動きを再開させるべきである。地球温暖化の速さと影響には大きな不確定性があるが、脅威は現実のものである、と述べています。

 次に、レヴィの論説の論旨は次の通り。すなわち、天然ガスを支持する者は、安価な天然ガスを、グローバルな気候変動による災厄に対する、政府からの働きかけを、ほとんど、あるいは全く必要としない稀有な解答と考える。現在、世界中の電気の46パーセントは、石炭によって発電されているが、石炭火力発電所をガス火力発電所に置き換えれば、CO2排出量は、およそ半分減る。天然ガスが豊富で安価であれば、市場原理を通じて、気候へのリスクを低減してくれるというわけである。しかし、こうした見方は、米国で好まれているが、欧州や、気候変動対策は再生可能エネルギーと不可分と考えている、気候活動家の間では、警戒心をもって受け止められている。

 一方、CO2排出を理由に、天然ガスの供給を直ちに抑制すれば、再生可能エネルギーは、まだ相対的に高価なのだから、石炭と石油をさらに使うことに繋がる。

 しかし、長期的には、天然ガスへの懐疑論者は正しい。政策立案者たちが受け入れている長期的な気候目標を達成するためには、十年か二十年のうちにゼロ炭素エネルギー源への転換を開始する必要がある。それは、石炭や天然ガスから離れ、再生可能エネルギーと原子力を推進するということである。


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