2024年12月6日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年1月14日

 2024年1月13日、台湾総統選が実施され、与党・民進党の頼清徳候補が当選した。5月から新政権が発足する。16年からの蔡英文政権を引き継ぎ、3期連続で民進党政権が継続することが決まった。

民進党の開票集会。総統選挙の勝利にもかかわらず、党幹部の表情は硬い(2024年1月13日、筆者撮影)

 台湾総統選において、日本、そして世界からもっとも注目を集めるのが中台関係の行方だ。頼候補は蔡英文総統の対中政策である「4つの堅持」(自由民主の憲政体制を永遠に堅持する、中華民国と中華人民共和国が互いに隷属しない状況を堅持する、主権の侵犯と併呑の不容認を堅持する、中華民国台湾の前途は全台湾人民の意志に従うことを堅持する)を引き継ぐと表明している。

 中国共産党は「4つの堅持」は大陸と台湾が「一つの中国」であることを否定しており、台湾独立の意志を婉曲的に表現したものと強く批判している。台湾政策を担う中国・国務院台湾事務弁公室は選挙後に「民進党は党内の主流民意を代表していない」との報道官コメントを発表した。16年の蔡英文政権誕生以来、中国本土と台湾の緊張関係は深まっていたが、今後も厳しい関係が続くことになる。

外交面で評価されるべき蔡英文の成果

 厳しい関係ではあったものの、蔡英文政権の対中関係マネージメントには合格点が着けられるのではないか。16年時点では中国の経済的圧力によって台湾経済が大きくダメージを受けることが懸念されていた。団体観光客の縮小や農産物の輸入禁止などの経済的威圧はあったものの、経済成長や失業率には落ち込みは見られなかった。

 また、軍事的脅威についても、軍事力そのものでは中国本土とは圧倒的な戦力差があるものの、外交面での成果で対抗したことも評価できる。台湾の国際的プレゼンスはこの間、大きく高まり、米国や日本など諸外国との関係も緊密化している。実際、日本メディアを見ていても、「日本人ってこんなに台湾総統選に興味があったっけ?」と驚くほどの扱いぶりだ。

 20年と24年の総統選の直前2週間に、日本の全国紙(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞)に掲載された関連記事を調べて見た。20年の33件に対し、24年は83件と倍以上に増えている。日本をはじめとする国際社会の関心の高まりは、中国に対し、軍事侵攻を行えば国際社会の介入、制裁を招くとの抑止力として働く。


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