2024年3月5日(火)

Wedge OPINION

2023年12月4日

 ウクライナ戦争は、サイバー攻撃の脅威や、作戦遂行における宇宙の人工衛星の重要性、無人兵器の活躍の幅広さなど、「新しい戦争の形」を浮き彫りにした。それらはそのまま、台湾有事において日本が直面する戦場の現実となる可能性がある。2022年末の「安保三文書」改定に代表されるように、このサイバー・宇宙・無人兵器といった「新領域」に適応すべく、政府は急ピッチで対応を進めているが、課題は依然として多い──。

台湾有事の際に繰り広げられる中国との戦いでは、「新領域」が死活的に重要な位置を占めることになる(MAXGER/GETTYIMAGES)

大澤 ウクライナでは無人機(UAV)や無人水上艦艇(USV)が活躍しているが、東シナ海ではどのような戦いになることが想定されるのか。

大澤 淳 Jun Osawa
中曽根康弘世界平和研究所 主任研究員
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院修士課程修了。外務省外交政策調査員、米ブルッキングス研究所客員研究員、内閣官房国家安全保障局参事官補佐、同局シニアフェローなどを経て現職。笹川平和財団特別研究員を兼務。(撮影・さとうわたる〈以下同〉)

渡邊 1996年の第三次台湾海峡危機では米海軍が空母機動部隊を差し向け中国を力で抑え込んだが、中国の軍事力増強により、そのようなことを再びできる状況ではない。中国の射程1500キロメートル以上とされる対艦弾道ミサイルなどのリスクが大きすぎるため、有事となれば米空母機動部隊などの大型の有人艦は、少なくとも小笠原諸島などの第2列島線付近まではいったん下がらざるを得ないだろう。

渡邊剛次郎 Gojiro Watanabe
元海将・元横須賀地方総監
1961年生まれ。防衛大学校を卒業後、海上自衛隊入隊。米海軍大学指揮課程卒業、米ヘンリー・L・スチムソンセンター客員研究員。防衛省海上幕僚監部防衛部長、海上自衛隊横須賀地方総監などを歴任し、2019年に退官(海将)。

 その代わり、東シナ海においては、分散配置された小型有人艦などに加え、特に最前線では、UAV、USV、無人潜水艦(UUV)といった無人兵器が主役となって戦いを繰り広げるようになるであろう。そしてこの「第1ラウンド」で優勢を獲得した後に、空母などの大型有人艦が入っていって「第2ラウンド」が始まる。これからの東シナ海で想定される戦いは、このような二段構えになるのではないか。

大澤 今年9月、横須賀に米海軍のUSVが初めて入港した。米国はUSVの開発・配備も着々と進めているのか。

渡邊 米海軍ではかなり大型のUSVやUUVの試験運用が始まっていて、米海軍は今後30年間で、全体の3割を無人運用が可能な艦艇にする計画だ。南西諸島などに展開して戦うことになる米海兵隊では、無人車両に対艦ミサイルを搭載した無人陸上兵器(UGV)の試験運用が始まっている。

住田 南西諸島、特に台湾に面する先島諸島は非常に激烈な作戦地域となる。そのような場所に陸上自衛隊は部隊を集め、住民の避難や保護を行い、中国軍の上陸から防衛する必要がある。自衛隊も無人兵器中心の戦いに適応しないと、生き残れないし、守れないだろう。

住田和明 Kazuaki Sumida
元陸将・元陸上総隊司令官
1961年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上幕僚監部防衛部長、第2師団長、統合幕僚副長、東部方面総監、陸上総隊司令官などを歴任し、2019年に退官(陸将)。

渡邊 海上・航空自衛隊や海上保安庁ではUAVの運用や試験的運用が始まっている。また、防衛省も今年8月の「令和6年度の概算要求」の中でUSVや輸送用UAV、無人水陸両用車の研究開発などの取り組みを示すなど、無人兵器の開発・配備を急いでいる印象だ。

 だが、無人兵器が存在感を増す一方で、それらに関する国内法や国際法は、そもそもそのような存在を想定していなかったこともあり、いまだあいまいな部分が多い。たとえば、今後増えてくるであろう大型USVや大型UUVは、その運用によって「軍艦」の定義に当てはまるのかどうかについても、解釈は定まっていない。

 なお、UAVにおいては、企業所有の機体を、運航についても委託企業が実施する「COCO」と呼ばれるリース運航契約が一般化しつつあり、海自(試験的運用において)や海保、米海兵隊やインド海軍で採用されているなど、一種のトレンドとなっている。だが、操縦しているのは当然民間人であり、有事に移行した際に文民が戦闘にどこまで関わっていいのか、その文民の国際法上の保護はどうなるのかは、手つかずの問題だ。

 また、現在の無人兵器は人間の手で遠隔操縦されているものが主流だが、近い将来にはAIによって完全自律で戦闘を行う無人兵器「自律型致死兵器システム(LAWS)」が登場するだろう。これには国際法や倫理的な観点から、人の意思が介在することなく人を殺傷してもよいのかといった問題が生じる。国際的な規制も検討されているが、国家間の意見の相違により具体化するには至っていない。

住田 このように無人兵器に関わる法律面であいまいな箇所が多いままだと、自衛隊の現場レベルで難しい判断を迫られることになる。法整備や運用面の検討を進めておかないと、最悪の場合、部隊も装備もあるのに、法整備が追いついていないから実戦に投入できない、ということになりかねない。


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