2024年5月3日(金)

WEDGE REPORT

2023年7月31日

 人類の歴史は戦争の歴史であり、戦争の様相は科学技術の進歩にあわせて変化してきた。第一次世界大戦で戦車と毒ガス、飛行機、潜水艦、第二次世界大戦で空母と核兵器が登場して以降、各国の軍隊は長らく、これらの兵器を整備し、運用する体制を維持してきた。だが、ウクライナ戦争の勃発は、この戦争と科学技術という不可分な歴史に、ドローンという新たな兵器の登場を刻んでしまった。

 ドローンが戦車や戦闘機などと並ぶ主要な兵器となったことは、SNSに投稿されているドローンを使った偵察やターゲッティング、爆撃など多くの映像が証明していると言えるだろう。このことを裏付けるように、ウクライナは米国やトルコ、イスラエル、ポーランドから、ロシアは中国やイランからドローンを輸入して戦線に投入し続けている。

 しかし、各種映像が伝えるドローンの戦いは陸上作戦のものがほとんどで、地表の約7割を占める海洋でのドローンの戦いの様相は、ウクライナ戦争からは見えてこない。果たして、ドローンを使った海上作戦の未来像は、どのようになるのだろうか。

 筆者は、6月7日から9日にかけて韓国・釜山で開催された国際海洋防衛産業展(MADEX2023)で、その一端を垣間見ることができた。

世界初の「ドローン空母」保有計画

 MADEX2023の会場に足を踏み入れて目に飛び込んできたのは、韓国の防衛産業大手「LIGネクスワン」のブースに展示されていた無人艇(USV)「シーソード2(海剣)」のモックアップだった。

シーソード2。2021年4月、海上公試を終えた(筆者撮影、以下同)

 シーソードは現在、5型まで開発されており、シーソード2は全長12メートル、全幅3.5メートル、排水量11トン、ディーゼルエンジン2機を搭載し、最高速力35ノット(時速約65キロメートル)を誇る。兵装は船首に韓国機械メーカー「現代WIA」製の12.7ミリ遠隔制御武器システム、船尾に機雷などを捜索する航空宇宙メーカー「LIGネクスワン」製の遠隔操縦ロボット(ROV)を搭載している。また、航法・監視システムとして、電気工学・赤外線(EO/IR)レーダーとジャイロ安定化ジンバル(揺れの補正)、レーザー照準・識別システム、LiDAR(光による対象物の検出・測距)、広域カメラを備える。

 これら装備によって、シーソード2は海上でのISR(情報収集、警戒監視、偵察)活動、機雷や着底潜水艦の捜索、敵艦艇との交戦を自律航行と遠隔操縦を組み合わせて行うことができるという。会場には小型の模型しか展示されてなかったが、2型とほぼ同形の3型は70ミリ多連装ロケット砲を備え兵員8人を輸送することができ、やや小ぶりな排水量3トンの5型は最大速力40ノット(時速約75キロメートル)を誇る。

 韓国がUSV開発に注力するには理由がある。韓国海軍には、1999年に延坪島周辺海域で北朝鮮と艦艇による銃撃戦となった第1次延坪海戦、2002年の第2次延坪海戦、10年に北朝鮮製魚雷により韓国海軍哨戒艦が沈没したとされる天安沈没事件で、哨戒艦1隻と哨戒艇3隻を失い、210余名が死傷した苦い記憶がある。このため、兵員の犠牲を局限しながら、ISR活動と水上打撃戦、浅海域での対潜戦や対機雷戦を行わなければならない。


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