今年6月7日から9日にかけて、韓国・釜山で国際海洋防衛産業展(MADEX)2023が開催された。一般公開されてない7日と8日を取材して、筆者が見たものは、韓国が国家の威信をかけて推進する武器輸出(K-defense)の力強さとドローン中心の戦いに変わりつつある海上作戦の姿だった。
正規空母の導入を決めた韓国
MADEXは1998年の韓国海軍創設50周年を記念した国際観艦式をきっかけに始まり、今年で13回目を迎える。釜山で国際観艦式やMADEXが開かれる理由は、韓国第2の都市というだけではなく、海自の自衛艦隊司令部に相当する海軍作戦司令部が置かれる海軍の街だからだ。
今年のMADEXは、韓国政府が推進する「世界4大防衛産業輸出強国」への跳躍を支援し、AI基盤の海洋用無人複合戦闘体系を中心とする海軍の未来像を提示することを目的に開催された。
会場に足を踏み入れると、韓国の防衛産業大手LIGネクスワンの無人水上艇(USV)「シーソード」が目を引いた。しかし、海外メディアが群をなしていたのは、会場の真ん中に向かい合わせで配置された、防衛産業の2大巨頭である現代重工業とハンファオーシャンのブース。現代重工業は空母、ハンファオーシャンは潜水艦と、目玉商品の大型模型を展示していた。
現代重工業が展示していた空母の模型はCVX3、つまり、韓国型空母の3次案にあたる。現代重工業は前回のMADEX2021で、スキージャンプ方式、無人機(UAV)専用甲板を備えた基準3万3000トン級CVX2の模型を展示して注目を集めたが、CVX3はそこから大きく進化していた。
このCVX3は、離着艦方式がCATOBOAR(Catapult Assisted Take Off But Arrested Recovery)に改められ、基準排水量は4万トンに増えた。分かりやすく言えば、CVX2が短距離・垂直離陸機(STOVL)とヘリコプター、UAVの運用を想定した軽空母だったのに対して、CVX3は中型の正規空母を指向している。
正規空母を運用しているのは米海軍(11隻/ニミッツ級基準排水量約7万4000トン)のみで、2022年に国産空母「福建」(基準排水量約7万1000トン)を進水させた中国海軍がこれに続く。歴代のCVXと外観が近く、基準排水量が大きい英海軍のクイーン・エリザベス級(基準排水量約4万5000トン)でさえも、スキージャンプ方式でSTOVL機を運用しているのだから、CVX3がいかに野心的な空母であるかが見てとれる。