2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2023年6月8日

 ゴールデンウィーク終盤の5月7日、5年ぶりとなる首相の訪韓に同行した岸田文雄首相夫人の裕子氏は、尹錫悦大統領夫人の金建希(キム・ゴニ)氏に招かれ、ソウル四大名刹の一つである津寛寺で茶会をともにした。

(Diversity Studio/gettyimages)

 最近の良好な日韓関係から、両国の関係は新たな時代に入ったと見てとれるが、それでも火種を抱えていないわけではない。その火種を、金建希氏が推進する文化財返還外交に見ることができる。

 この問題は、日本が世界の潮流を見誤り、対応を間違うと、懐古主義、歴史修正主義のレッテルを貼られかねない。国際政治上、非常にセンシティブな問題なので、本稿で詳しく解説していきたい。

世界に300万も点在する韓国の文化財

 韓国・文化庁傘下の国外所在文化財財団のホームページを開くと、「299,655」という数字が現れる。この数字は、27カ国に散らばる韓国文化財(国外所在文化財)の数(2023年3月1日現在)を示しており、それらを所蔵する上位3カ国は下表の通りで、その後は中国、英国、フランス、ロシアと続く。

 また、同財団は年度別の国外所在文化財の現状も公表している。初出の08年は7万6143点だったものが、18年には17万2316点に、23年には上述のとおり29万9655点となっていることから分かるように、同財団は精力的な調査を行なっている。

 実は、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)のため訪日した金建希氏は、5月21日の韓独首脳会談でショルツ首相の夫人、ブリタ・エルンスト氏と会談し、「ドイツが所蔵する韓国文化財について、両国の共同出処調査など具体的な協力が行われることを望む」と要請。これにエルンスト氏が「ドイツ政府は文化財返還に関心と努力を傾けている」と応え、両国間で韓国の海外所在文化財について協議していく意向が明らかになった。

 さらに言えば、金建希氏は4月の米国国賓訪問に際して、ボストン美術館を訪問。同館が所蔵する文化財の返還をめぐる議論再開に言及し、同館から「関連機関と必要な協議をする」との言質を得ている。


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