2024年4月20日(土)

21世紀の安全保障論

2023年5月31日

 「ロシアの核兵器による威嚇や北朝鮮による核・ミサイル開発といった動きの中で、(中略)現実的で具体的な取り組みを着実に進める思いを発信したい」――。岸田文雄首相は先進7カ国首脳会議(G7サミット)が開かれる直前の5月15日、核なき世界の実現を問われ、新聞各紙のインタビューにそう答えている。 

(RM(ライツマネージド))

 ロシアのウクライナ侵略によって、G7各国が核兵器の使用を現実の脅威と認識したことで、サミット開催都市が被爆地の広島市となった。サミット初日の19日、G7首脳が広島平和記念資料館を訪れ、芳名録に記帳した内容を読めば、核兵器の恐ろしさに心揺さぶられ、使わせてはならない兵器であることを実感したことは明らかだ。

 サミットで発出された「広島ビジョン」も、「核兵器の使用の威嚇、いかなる使用も許されない」ことが強調された。だがこれは、侵略を続けるロシアへのメッセージであり、日本にとっては、核兵器を保有し、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に向けたメッセージこそが必要だったのではないだろうか。

北のミサイル発射から30年

 30年前の1993年5月29日、北朝鮮は初めて日本を標的に弾道ミサイルを発射し、能登半島沖の日本海に着弾させた。以後、日本は米国と共同して弾道ミサイル防衛(BMD)システムを構築し、国際社会も北朝鮮に対し、核とミサイル開発の放棄を働きかけてきた。

 しかし残念ながら、北朝鮮のミサイル技術は向上し、もはやBMDシステムだけで北朝鮮のミサイルを迎撃することは難しく、しかも、常任理事国のロシアがウクライナを侵略し、国連が機能不全となったことで、北朝鮮は昨年以降ミサイル開発と発射のペースを速め、大陸間弾道ミサイル(ICBM)級を含め63発のミサイルを発射するに至っている。過去6回の核実験を経て、すでに20個以上の核兵器を保有しているとされ、現在はICBMに搭載可能な核兵器の開発を加速しているとされる。

 この間、国内では全国瞬時警報システム(Jアラート)が何度も発令され、4月13日のケースでは初めて北海道への着弾が想定される事態となった。実際には、探知直後にミサイルはレーダーから消え、空中分解などしたとみられるが、前米国家安全保障担当大統領補佐官のロバート・オブライエン氏は、都内で開かれた講演会で「北朝鮮がミサイル発射に失敗し、日本に着弾する事態となれば戦争になる」と指摘した。


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