日本の対応は?
このような略奪文化財返還の潮流は、文化財がいつ、どのようにして国外に持ち出されたのかを問わず、現在の所蔵国はそもそもの所有国に返還しなければならないというものだ。上述のとおり、韓国はファーストレディの金建希氏が先頭に立って旗を振り、BTSのリーダー、RM氏が21年と22年、国外所在文化財財団に計2億ウォン(約2060万円)を寄付するほど、国民的な関心が高い。
一方の日本はどうだろうか。10年の日韓併合100周年に際して、日本共産党の吉井英勝衆議院議員(当時)が行った、朝鮮半島から持ち込まれた文化財の所在や点数などの質問に対して、政府は「お答えすることが困難」と回答を避けており、戦前に持ち込まれた文化財の由来や点数などの実態すら明らかにされていない
韓国や北朝鮮、中国が文化財返還を具体的な外交課題として組み入れてきたとき、果たして、日本政府は適切に対応できるのだろうか。文化財返還が世界的な潮流となった今、政府が誤った対応をとり、世論がそれを後押しすると、日本はいらぬレッテル貼りを受けることになりかねない。そうならぬよう、外務省、文化庁をはじめとした政府の適切な対応を期待したい。