2024年5月17日(金)

WEDGE REPORT

2023年6月28日

 模型をよく観察すると、韓国航空宇宙産業(KAI)が開発中の艦載戦闘機KF-21Nを14機、早期警戒機2機、ヘリコプター2機を甲板状に配置し、フェイズドアレイレーダー、電磁カタパルト2基とエレベーター2基、3本のアレスティング・ワイヤーを装備していることが分かる。

浮沈を繰り返す空母導入計画の未来図

 では、韓国の空母建造はどのような計画で進められているのだろうか。現代重工業関係者は語る。

 「韓国政府は20年8月に決定した21年〜25年国防中期計画で、3万トン級の軽空母を導入し、21年に基本設計に着手、30年に戦力化することを公表しています。今回発表したCVX3は、未来海上作戦の様相や艦載機について新たに検討を加えました。われわれはどのような性能要求にも応えることができます」

 韓国政府の計画どおりであれば、すでに現代重工業のドックで空母が建造されているはずだ。しかし、そのような事実はない。上述の関係者は起工の時期を「政府の問題」と回答を避けたが、尹錫悦大統領は前政権が推進した軽空母事業について、政権の軍事ドクトリンである国防革新4.0で言及せず、23年度予算に反映しなかった。

 これまで韓国の空母導入計画は何度も浮沈を繰り返しているが、その根本的な理由は陸海空軍の力関係にあると言える。海軍は海兵隊を加えても最も規模が小さい。また、陸軍と戦略軍主体の朝鮮人民軍と対峙する韓国軍において、巨大なカネ食い虫である空母の導入は常に議論の的になってきた。

 とは言え、各国メディアが入れ替わり立ち替わり、空母の模型の前で取材していたことを考えれば、韓国型空母のインパクトが大きかったことは否定できない。

6兆円を超える潜水艦輸出プロジェクト

 日本ではほとんど話題になってないが、韓国ではカナダへの潜水艦輸出が大きな注目を集めている。今年4月、カナダの全国紙オタワ・シチズンは、通常動力潜水艦(SS)ビクトリア級4隻が建造から30年経ったことを受けて、カナダ海軍が10年以内にSS12隻を調達する、総額600億カナダドル(約6兆4635億円)の巨大プロジェクトを構想していると伝えた。この構想について、海外の軍事専門家は韓国のKSS-Ⅲ級と日本のたいげい級、スペインのS-80級が候補に上がっていると示唆するが、最右翼はKSS-Ⅲ級だ。

 このホットな話題に気を良くしたのか、今年5月にDSME(大宇造船海洋)から社名を変えたハンファオーシャンのブースには、カナダ輸出向けに開発を進めるKSS-Ⅲ batch2の模型が置かれていた。ここも現代重工業の空母と同じく、海外メディアが集まっていたが、一つ異なった点は、韓国海軍の提督たちが次々と訪れ、同社重役と記念写真に収まっていたことだ。

ハンファオーシャンの潜水艦の模型

 にこやかな提督たちの笑顔からは、韓国製潜水艦が輸出されることによって韓国海軍の位相が高まることへの期待感だけではなく、退役後の生活を含めた現実的な利益への思惑も垣間見られた。


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