民需へのドローン活用も進まない日本
ここまで、海上作戦におけるドローンの未来像を見てきたが、MADEX2023では民需用ドローンも数多く展示されていた。その中で、日本も早急に取り入れるべきだと感心したのが、沖合に停泊する船舶へのデリバリーだ。
釜山の海洋ドローン技術社は、21年から釜山港で沖合に停泊する船舶への配達サービスを開始し、現在は韓国第2の貿易港である麗水・光陽港(全羅南道)でも展開している。使用するドローンは市販の大型ドローンで5キログラムのペイロード(最大積載量)を持つ。ちなみに、サービスを展開する釜山港はコンテナ貨物取扱量世界7位、麗水・光陽港は85位で、アジア有数の貿易港だ。
同社のファン・ウイチョル社長は、「コロナ禍で入港しても接岸できない乗組員の辛さを、海洋大卒でヘリコプターパイロットである私の知見で解決したいと思い起業しました。これまで1回数万円かけて連絡船で行われていた配達が、スマホで注文でき、わずか数分、数千円で利用できるサービスに転換しました。今ではピザやハンバーガーなどの軽食だけでなく、スマートフォンやコスメなどの韓国土産も配達しています」と話す。
コロナ禍は収束したが、船舶は入港に際して、接岸まで沖合で順番待ちをすることもあれば、接岸しても乗組員が市街地に出かける時間がないことが多い。船乗りの立場に立てば、思わず膝を叩きたくなるサービスであることが分かる。
同様のサービスはシンガポールでも展開されているが、日本では未だ行われていない。約40年前の1980年代、神戸港がコンテナ貨物取扱量世界4位だったが、現在では東京港がやっと46位に入るほど、港湾物流が衰退している。
韓国が世界に向けてローンチしたドローンの未来像は、いかがだっただろうか。新たな科学技術をどのように使うのかは、結局のところ人の判断だ。ドローンの軍事利用については意見が大きく分かれると考えられるが、民需への活用は規制や制度を速やかに変更して、対応していかなければならないという点に、大きな異論はないのではないか。
石橋を叩いて渡る日本人とパリパリ(早く早く)文化の韓国人では文化や気質が異なるが、こと第4次産業革命においては、韓国人の方がうまく波をキャッチして乗りこなしているように見えるのは、筆者だけではないだろう。