2023年2月4日(土)

科学で斬るスポーツ

2013年10月22日

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玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 「力まかせに投げていない証拠。リラックスして投げ、三振は、欲しい時に狙っている。シーズンを通じて、体への負担を少なくした省エネ投法で安定した力を出すのにつながった」と、多くのスポーツ科学の専門家は分析する。

 投手の体調は、登板のたびに異なり、すべて好調ということはありえない。その好不調の波を可能な限り小さくし、不調のときにきちんと対処する技術を持っているか、もっていないかが、一流と二流を分ける大きな壁となる。今年の田中投手にも、もちろん好不調の波があったが、その差は極めて小さく、悪い時はきちんと修正していた。ここに負けない秘密がある。

 では、田中投手のどこが良いのか。

 昨年と今年の一連の投球動作を比較しても素人目にはほとんどわからない。しかし、プロ野球の全試合を解析するフェアプレイ・データ(http://fairplay-data.co.jp/)の石橋秀幸社長は、「今年は決定的に違うことがいくつもある」と強調する。

 まず、石橋さんが注目するのは、ワインドアップで足をあげた時の安定感。今年のフォームは、最も足を高く上げたとき、足の裏から垂直に伸ばした線上に頭の中心があるのがわかる。(図2左)腰をひねっているが、この時、安定して立つために膝を少し曲げる(屈曲)のが一般的だ。しかし、今年の田中は全く膝が曲がっていない。体の中心線の体幹がしっかりと、太い柱になっていることを示している。

図2 昨年と、今年の田中投手の足上げ時の比較
(フェアプレイ・データ提供)  拡大画像表示

 これに対し、昨年のフォームは、足の裏から延ばした垂直線より前のキャッチャーよりに膝、頭がある。体幹が前傾し、膝も曲がっていることがわかる(図2右)。

 「投げよう投げようという意識が前面にでて、体幹が前に流れている感じだ。これではタメが作れず、上半身に力が入ってしまう」と指摘する。

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