上半身をリラックスさせる「0.3秒のタメ」
今年の場合、昨年のフォーム並みに体幹が傾くまでは、最も足を高く上げた状態から0.3秒かかる。
「この0.3秒のタメで、下半身を有効に使い、その分、上半身に無理な力を入れていない。下半身主導の上半身がリラックスした投げ方だ。つまり、同じスピードを出すのに少ない力で楽に投げられていることを意味する。省エネ投法の秘密でもあり、その余裕が球の切れ、コントロールにつながっている」と分析する。
もう一つ、上半身の力みが消えている証拠を見てみよう。それは、踏み込んだ足が着地した時の上半身の位置だ。体幹の中心線(図3黄線)を見ると、今年と昨年の違いがよくわかる。
回転半径が大きくなった上半身
今年のフォームは、中心線より左側に上半身が残っている。胸の「RAKUTEN」の文字を見れば一目瞭然だ。
上半身が前のめりせずに、あまり動いてないことを示す。上半身を使える範囲が大きくなり、腰の回転によって楽に腕が触れることになる。物理用語で言えば回転モーメントが大きいということである。
「上半身の力が抜け、力がボールに伝わる」理想的なフォームといえるだろう。
田中投手も「これまでは、常に全力投球だったが、今年は力を入れる部分は少なくなっている」と語り、上記の映像分析と見事に一致する。
田中投手の投球フォームは完成に近づいたのだろうか?