2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2024年1月18日

 一部メディアは、COP28において脱石炭連盟(Powering Past Coal Association:PPCA)に米国が加盟を表明し、主要7カ国(G7)で加盟していないのは日本だけと、あたかも日本が孤立しているかの印象操作の記事を配信したりもした。しかしPPCAという組織は加盟国のほとんどが石炭の主要消費国「でない」国々で構成されており(消費量ゼロの国も多い)、率直に言えば石炭の重要性を認識する機会もない国々や自治体が集まって勝手なことを言っているだけである。

 もっとも米国は世界第3位の石炭消費国であり、米国が加盟したことでようやくPPCAの影響力に現実性が生まれたと考えられなくもない。しかし米国は国内ではガスが石炭よりも安く、何年も前から経済性によって石炭火力はガス火力に代替される趨勢で、いずれ石炭火力を撤廃することは既定路線である。これまでは撤廃へのスケジュールに口出しされることを嫌って未加盟だったと思われるが、バイデン大統領のレガシー作りの一環で今回加盟したのだろう。

 しかし世界の主要石炭消費国、とりわけ2カ国で世界の石炭消費の7割を超える中国とインドが未加盟である以上、PPCAの枠組みの中でやれることはごく限定的である。COP28閉幕の2日後、国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)が2023年は世界の石炭消費量が前年比1.4%増加して史上最多となる見込みと公表したが、世界全体の消費増分1億2100万トンに対し、中国は2億2000万トン(前年比成長率4.9%)、インドは9800万トン(同8.4%)で両国合わせて3億1800万トンの消費増となっている。

 要するに、中印を除けば世界で石炭消費の削減は進んだが、中印両国が石炭利用を拡大したため全体として石炭消費量が増加しているということだ。PPCAが何をやろうとも、中印が加盟しなければ全く意味がないということは容易に理解できよう。

再エネの導入拡大も桁違いの中国だが?

 IEAによれば24年以降は太陽光や風力など再生可能エネルギー(再エネ)の導入が引き続き進むので、中国の石炭消費量は減少する見通しとしている。しかし本当にそうなのか?

 中国は世界の石炭消費の過半を占める一方、太陽光・風力ともに世界最大の導入量を誇る。そして23年は中国の太陽光・風力の新規導入量が史上最高の230ギガワット(GW)を記録した。欧州全体で75GW、米国で40GWというから(いずれも速報値)、中国の再エネの成長力は群を抜いている。

 そして中国が再エネの導入を本格化させた2000年代後半以降、中国の一次エネルギー消費に占める石炭の比率は急激に低下してきた。同比率の2000年代以降のピークは07年の72.5%で、その後上下しつつも11年には70.2%まで低下した後、それ以降は一貫して低下し続け、21年には55.9%とわずか10年で15ポイントも急減したのであった。

 しかしながら、22年は11年ぶりに石炭の比率の低下傾向が反転、わずか0.3ポイントであるが、56.2%へと上昇した。この22年の再エネの導入状況はと言えば、太陽光の新規設備容量が86GW、風力が同37GW、合計123GWであった。

 先に述べた23年の新規設備容量230GWと比べると半分程度に過ぎないが、同じ22年の太陽光および風力の欧州における新規導入量59GW、米国の同25GWと比べるとやはり桁違いの進展と言えよう。重要なことは、これだけの再エネの導入拡大を達成したにもかかわらず、石炭の絶対量を減らすことはおろか、エネルギー構成における石炭の比率を下げることも叶わなかったということである。


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