2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月1日

 今回の総統選挙の結果、台湾国民の多数が中国からの「台湾統一」への圧力に屈しないことをはっきりと示した。このことをウォールストリート・ジャーナル紙の社説は「台湾の民主主義の勝利」と述べている。

 得票率を見れば、頼清徳(民進党)40%、候友宜(国民党)33% 柯文哲(民衆党)26%であり、頼清徳の圧勝とまでは言えないが、一般の予想を上回る得票率を獲得したと評することが可能であろう。

 頼清徳はかつて、「自分は台湾独立のために仕事をする人間でありたい」との趣旨を述べたことがあるが、最近は「台湾独立」の言葉を封印し、蔡英文現総統同様に、現状維持路線をとることを明言してきた。当選直後の声明のなかで「台湾海峡の平和と安定を維持することは総統としての最も重要な使命であり、現在の憲法制度に則り、現状維持につとめる」と述べた。

 中国との関係については、「相互の尊厳を前提に、対立を対話に置き換え、自信をもって中国との交流と協力を開始する」と述べつつも、「しかし一方、中国の言葉による恫喝や軍事的脅威に直面した時、私は断固台湾を守る決意である」と明言している。

 また、「中華民国台湾」は民主主義と権威主義の間では、民主主義の側にたつことを選択した、と述べ、台湾としては、国際社会の民主主義国家と肩を並べて行動すると断言した。

 中国共産党はこのような頼清徳を「分離独立主義者」と呼んで、強い警戒心を隠そうとしていない。習近平にとって、「台湾統一」は「歴史の必然」との言い方は変わることは無いだろう。

 他方、総統選挙と同時に行われた立法院選挙を見れば、民意の大勢が総統に頼清徳を選びながらも、立法院においては、民進党に白紙委任をしたわけではない。民進党50議席、国民党51議席、民衆党8議席に示されるように、議会との関係において、民進党・頼政権は、難しい運営を迫られる可能性がある。

民衆党の動きに今後も注目

 今回の総統選挙をめぐり、野党国民党の打った手がむしろ、民進党・頼清徳に有利に働いたと見られる点はいくつかあった。一時国民党と民衆党の野党連合が成立する直前まで行ったが、最終的には、民衆党がこの野党連合を不満として、かかる連合に反対したため、連合は成立しなかった。

 さらに、国民党・元総統の馬英九が、中国共産党について「習近平主席の言うことは信頼できる」との趣旨の発言をし、国民党支持者も含め多くの台湾人からひんしゅくを買ったことがある。

 今年5月より発足する頼清徳政権にとっては、議会の「ねじれ現象」の中で、いかに民意を取りまとめていくか、容易ではないであろう。頼清徳としては、8議席という、予想以上の議席を獲得した民衆党が議会でキャスティング・ボートを握るケースが増えることを想定しておかねばならないと思われる。

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