2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年2月1日

 2024年1月13日付のウォールストリート・ジャーナル紙社説は、1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果について、「民主主義の勝利」と讃えるとともに、米国が西太平洋と台湾の防衛力強化に一層コミットするよう求めている。

(oatawa/grebeshkovmaxim/gettyimages)

 台湾の有権者は、激しい選挙戦を経て、頼清徳副総統を得票率40%で選出した。頼氏は勝利演説で「世界的な選挙の年である2024年において、この最も期待された最初の選挙において、台湾は民主主義の最初の勝利を記録した」と述べた。

 台湾の中国との関係が再び争点となった。本土からの政治的自立を明確に支持する民進党は、総統選を3回連続で勝利した。頼氏は、かつては台湾の正式な独立を支持していたが、現在は現状維持と米国その他の友好国との関係緊密化を強調している。頼氏は、蔡英文現総統の政策を継続すると見られる。

 中国は、侵攻や海上封鎖を示唆して台湾人を脅すことを目的に、選挙日近くに複数の偵察気球を飛ばしたが、逆効果となった。脅しは、台湾人のアイデンティティを最も強く打ち出している候補への支持を高める結果となった。

 台湾の有権者は、中国が香港の自治の約束を破り民主主義を唱える香港人を乱暴に扱ったことも観察してきた。台湾人は、台湾の自治に関する北京のいかなる約束も信じることができないことを知っている。

 頼氏の勝利は、米中関係の安定を目指すバイデン政権には懸念材料となろう。しかし、いかなる新たな脅威も中国から来るのであって、台湾からではない。

 バイデンは選挙後、米国の元高官からなる代表団を台北に派遣する。これは有益な台湾への支持表明だ。中国は抗議するだろうが、中国は、米国が民主主義の同盟国への支援を躊躇しないことを知るべきだ。

 習は、いかなる手段を用いてでも台湾を奪還するとの野心を諦めないだろう。これは、米国にとり、早急に西太平洋における軍事力を強化し、あり得る侵攻を抑止するために最適な武器を供給することで台湾の防衛力を高めなければならないことを意味する。

 米国は、人民解放軍がまだ台湾を奪取する能力を獲得していないと習が考えているとみているが、アメリカ人の分断を浮き彫りにする米国の選挙の年には、あらゆることが起き得る。

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