党派を超えて 親密な対日関係
実際には、親密な対日関係の構築に対しては超党派の強力な支持がある。現にジュリア・ギラード首相時代の労働党政権は、日本との防衛・戦略協力関係の強化に尽力した。長年、防衛関係の構築・拡大に向けて着実に進展を遂げた末に、2011年3月の三重の危機(地震、津波、原発事故)を受け、豪州と日本の戦略関係は一気に加速した。
日本の自衛隊と米軍に続き、最初に福島の被災地に着陸したのは、豪空軍のC17輸送機だった。ギラード首相は地震と津波の発生からわずか1カ月後に、外国の首脳として初めて被災地入りした。震災後に日豪防衛関係が著しく緊密化したのは間違いない。連立政権下でも、間違いなくこの傾向が続くだろう。
豪州のメディアでは、地域で大きな軍事力を持ち世界的経済大国として台頭する中国の役割を巡る議論に多大な紙幅と時間が割かれてきた。中国は豪州にとって最大の輸出市場であり、一部のアナリストからは、そのような経済的影響力が米国との強力な軍事同盟に対する豪州のコミットメントを弱めるのではないかとの疑問の声が上がった。
労働党も新たな連立政権も、豪州は経済的利益と戦略的利益のどちらかを選ぶ必要はないと主張したが、豪州は米中両国が対立を避けるような形で2国間関係をマネージすることに多大な利害を持つ。
米軍配備がもたらす 地域外交への恩恵
アボット政権は恐らく、豪州北部への米海兵隊、米海軍の「ローテーション配備」という形で米国との協力拡大を加速させるだろう。今後数カ月間で海兵隊の配備が増え、1200人前後が豪国防軍の訓練場で演習を行うことになる。労働党政権下では、この新たな協力は16年までに2500人の海兵隊員の定期配備に拡大される予定だった。
新たな連立政権下では予定が早まる見込みで、パースに近い西部の主要海軍基地を拠点に活動する米海軍の船舶配備を容易にすることに大きな関心が向けられるだろう。米軍配備の最も重要な恩恵は、それが、強硬姿勢を増す中国の地域外交について懸念する東南アジア諸国にもたらす安心感だ。