9月に実施された総選挙において政権交代がなされたオーストラリア。東日本大震災の後に、ギラード前豪首相が外国の首脳として初めて被災地入りしたが、これにも象徴される親密な日豪関係の流れは、政権が代わっても不変である。豪国防省において長年戦略立案・危機管理政策に携わってきた筆者から、両国のさらなる防衛・戦略協力体制の強化に向けたメッセージ。
オーストラリア(以下、豪州)では、9月7日の総選挙で自由党と国民党の野党・保守連合が決定的大差で勝利を収め、政権が交代した。新首相はトニー・アボット氏だ。連立政権は貿易と投資、伝統的な友好国および同盟国との協力に大きな重点を置き、インドネシアやパプアニューギニアなど特に距離が近い近隣諸国との関係強化を推進するだろう。また、新政府は強力な軍事力を支持している。
(提供:ロイター/アフロ)
新政権の外交政策チームは、ともに西豪州のベテラン政治家であるジュリー・ビショップ外相とデヴィッド・ジョンストン国防相の2人。どちらも弁護士出身で、ジョン・ハワード政権で閣僚を務めた。ビショップ氏は自由党における実力者である。一方のジョンストン氏は興味深いことに、頻繁な日本訪問の経験から、個人的にも議員としても日本に強い関心を抱いている。
豪州の政権交代は日本にとって何を意味するのだろうか。保守連合は選挙前に公表した外交政策綱領で、経済関係を拡大し、日豪経済連携協定(EPA)をまとめ、より強力な戦略的パートナーシップを構築することで日豪の2国間関係に改めて重点を置くと述べていた。意義深いのは、政策綱領の声明はさらに、対日関係に関して豪州前政権の実績を批判したことだ。
「1950年代以降、アジアにおいて、豪州の最も誠実な友好国であり、最も重要な外交パートナーである日本は、ケビン・ラッド首相が初のアジア歴訪から日本を除外した時に疎外感を覚えた。ラッド首相は日本の外相による公式訪問の直前に、何の予告もなく、豪州政府は捕鯨問題を巡り日本を国際司法裁判所(ICJ)に提訴すると改めて発表し、日本に極めて恥ずかしい思いをさせた」