また、太平洋島嶼国について、豪州はこの地域の安定に特別な関心を抱いており、中国の外交的、経済的影響力の拡大を極めて注意深く見守っている。
こうした島嶼国は豪州のすぐそばの地域を構成しており、場合によっては地域の安定を促すために必要となる軍事対応の主導を豪州は国際社会に期待されているからだ。豪国防軍は過去15年間、災害救援と安定化任務のために何度もこの地域に展開してきた。
太平洋島嶼国に対する中国の利権の大半は、これらの国の政府が台湾に政治的支援を与えないようにすることを目的としており、支援プログラムと軍事的関与は各国の自給を促すことよりは、むしろ中国のアクセスと影響力を拡大するために活用されている。こうした動きは必ずしも豪州の利益を損ねるものではないが、この地域に対して大きく異なったアプローチを示している。
さらに、豪州の連立政権は日中両国と一層密接な関係を築くことに加え、インドネシアとインドを外交関係の最優先課題として挙げた。
アボット首相は、インドネシアは「我々にとって相対で最も重要な関係だ」と述べたが、両国が真の戦略的パートナーシップを築くためには膨大な仕事をこなさなければならない。
インドについては、インド向けのウラン輸出禁止措置を撤廃した労働党政権の判断が、インド政府に、豪州に対するより前向きな姿勢をもたらしたようだ。今後、豪印防衛関係が拡大し、貿易、経済関係が深まる可能性がある。
12年12月の日本の衆院選後、安倍晋三首相は日本、豪州、米国、インドの間に防衛協力の「民主的安全保障ダイヤモンド」が形成される可能性があると述べた(日本の政府当局者はすぐさま、これは現行の政府方針を反映した構想ではないと指摘する)。安倍首相の提案には一定の魅力がある。4カ国はいずれも現実的な民主主義国であり、自由市場を支持し、報道の自由がしっかり確立されたメディア制度を享受している。
ただし、現実問題としては、この目標に向けた進展は遅く、限られたものになるだろう。中国政府に対して、このようなイニシアチブによりあからさまに中国が封じ込められているという印象を与えれば、警戒感を強め、逆効果になる可能性が高いからだ。