2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年10月1日

 9月4日付米Foreign Affairs誌のサイトに、Hugh White豪州国立大学教授が論説を寄稿し、豪州は、アメリカ優位の世界に慣れて来たが、アジアの安全と平和、そして豪州の安全のためには、米国と中国がアジアで権力を分け合う新しい秩序を受け入れなければならない、と述べています。

 すなわち、豪州は、不可欠な同盟国であるアメリカと、経済的には圧倒的に依存している中国との二極間の板挟みとなっている。

 米国と中国は、それぞれと豪州との関係を競争関係と見ている。

 それはすでに1996年の台湾海峡危機で始まっている。豪州が米国の行動を支持した結果、中国は閣僚級の交流を停止した。2011年に海兵隊の受け入れに合意して以来、中国の風当たりは強くなり、その結果豪州の最近の国防白書は中国に対して宥和的な内容となっている。

 何時まで、豪州は、米国と中国の間を選ばなければならないのだろうか。

 もし尖閣諸島で日中が衝突すれば、アメリカは日本を援ける可能性が大きい。その場合、米国は豪州に派兵を要請するであろう。派兵しなければ米豪同盟を傷つけるし、派兵すれば、豪州経済の将来がかかっている豪中通商関係に致命的な打撃を与える。

 つまり、中国と米国は、同等の関係で権力を分かち合う道を探る必要があるだろう。

 それを認めることは、従来アメリカの優位を認めて来た豪州としては、不安に感じるだろう。しかし、アジアの平和と安定、そして豪州の安全と繁栄のためには、それが必要であると豪州の指導者は認識しなければならない。まず、それについてアメリカと率直に話し合うべきだろう、と述べています。

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 豪州の対中宥和的論説は今までも散見されたが、責任ある識者が、これほどはっきりと対中宥和策を打ち出した論文は初めてと言えるかもしれません。


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