2024年7月18日(木)

知られざる「移民社会」ニッポンの現実

2013年11月6日

 民主党政権から安倍政権に代わって、この「高度人材ポイント制」は成長戦略の一環として受け継がれ、永住権が許可されるための在留歴を5年から3年にするなどの優遇制度の見直しを行おうとしている。専門性の高い外国人、外資系の誘致、海外の富裕層の来日促進の政策が検討されているのだ。中国や韓国との国際関係の悪化や国民の外国人労働者の流入に対する反発がある中、1000万人計画は、なりを潜め、高度人材の移民やその家族を誘致しようとしているわけだ。しかし優秀な人材は英語圏に行ってしまうだろうし、シンガポールのように相続税、贈与税、資産運用にかかる課税等々がゼロというような税制面での「恩恵」が大きい国へ流れてしまう可能性は高く、多くの人数を期待はできないのではないか。

優秀な「高度人材外国人」との競争から
逃げることはできない

 現実問題として外国人労働者の受け入れ人数は1992年末の128万人から2012年の203万人と大幅に増加し、外国人の定住、集住も進んだ。(法務省、在留外国人統計―旧登録外国人統計、2012) グローバル化の流れも手伝い日本人と外国人の国際結婚も増加し、ハーフも誕生、2006年には日本で生まれてくる赤ん坊の30人に1人が両親のどちらかが外国人となり、話題となった。内在的な国際化は促進され、中国人や韓国人、フィリピン人の流入が多く、中国人が公団や団地に居住し、日本の住民とトラブルになるケースが多くなっていることは筆者の1回目の連載「30人に一人がハーフの時代――たちはだかる文化の壁をどう乗り越えるのか」で紹介した。

 筆者は先日、中国人たちが集まるパーティに参加した。日本人と結婚している人、ビジネスで日本に来ている人、IT関係の仕事をしている人、新聞社に勤務するジャーナリストや夫が日本人の専業主婦の女性たちと様々だ。中国人の友人たちは、「本当に優秀な富裕層の中国人は、欧米へ移住する」と言うのだから、彼らはある程度に優秀な人たちということになろうか。彼らはパワフルだし、元気がいいし、日本の暮らしやすさをよくわかっていて、中国の環境汚染の状況や格差のひどさや食べ物が安全ではないことを考えると日本に暮らしたいと考えている人が多かった。

 こういった中国人や外国人たちがどっと入ってきて、日本に永住したらどうなるのだろうか。少なくとも、今の日本の若い世代は、優秀な「高度人材外国人」と競争することからは逃げることはできない。いずれにせよ、移民を受け入れるか、女性の労働力に頼るかの議論をしている間にも、もうすでに異文化コミュニケーション、外国人の流入は日本社会の中で始まっているのである。

 *今回で連載は終わりとなりますが、ご覧いただいた方々に厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

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