2024年7月18日(木)

知られざる「移民社会」ニッポンの現実

2013年11月6日

 日本企業の海外流出は続き、産業の空洞化をもたらしている。タイだけでも3133社が進出、その半数以上が製造業で、業績判明企業の25%が赤字だという(2011、帝国データ―バンク)。目的の明確でない海外進出が多く、「安易な海外展開はもう通用しない。国内でのモノづくりの戦略を明確化し、見直すべき時が来ている」(大澤裕司、「ものづくり白書を読み解く、海外流出は是か非か、進む日本のモノづくり空洞化」2013)という指摘もある。少子化を抑制するのに、大変重要な課題だと思う。

しぼんでしまった移民受け入れ
1000万人計画のゆくえ

 移民をいれることによって少子高齢化による労働力不足を解決しようという政策も長年打ち出されてきた。流動的な国際情勢の変動で移民政策も一進一退という感じで、外国人を受け入れるシステムも確立していないし、国民の覚悟もできているとはいえない。

 2008年6月自民党は「自民党国家戦略本部・日本型移民国家への道プロジェクトチーム(PT)」(木村義雄座長)の報告主旨をまとめており、今後50年間で約1000万人(50年後の日本の総人口約9000万人)の移民受け入れをめざすとし、永住許可要件の大幅な緩和や「移民庁」設置案等々を明示した。この報告書は、自民党内部の外国人材交流議員連盟(会長中川秀直)によって作られたが、自民党内部にも反対意見が多く、数値目標などは削除され、中川秀直氏の引退などもあって、推進されることはなかった。2008年秋にはリーマンショックが起き、2011年3月には東日本震災、福島原発事故による放射能汚染によって、外国人の多くは避難し、日本を去って行ったということもあり、移民推進はトーンダウンしたかのようにみえた。

 民主党政権下では、外国人へのポイント制度が2012年5月7日から導入、実施された。経済成長や新たな需要と雇用の創造への貢献が期待される高度な能力や資質を有する外国人の受け入れを促進することが目的となっており、ポイントの合計が一定点数に達した者を「高度人材外国人」とし、出入国管理上の優遇措置が与えられる。ポイントの評価は申請人の希望に応じ、学術研究、高度専門・技術、経営・管理の3つの活動内容に分類し、学歴、職歴、年収、研究実績等々の項目ごとにポイントを設定し、評価する。70点以上を獲得すると「高度人材外国人」として優遇措置が付与されるというしくみだ。

 優遇措置には、複合的な在留活動の許容、5年の在留期間の付与、在留手続きの優先処理、高度人材の配偶者の就労、一定の条件下での高度人材の親の帯同の許容、一定の条件下での高度人材に雇用される家事使用人の許容となっている。こういった「高度人材ポイント制」は英語ではpoints‐based preferential immigration treatment for highly skilled professionalsと訳され、移民=immigrationという言葉が使われている。しかし、日本語ではあくまでも「高度人材」であって移民という言葉は入れられていない。


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