4. 信用失墜の最高裁
国民の最高裁に対する信頼度は、とくに保守派判事が大勢を占めるに至ったトランプ政権以来、低下傾向が続いてきた。
米「マーケット大学法学大学院」が昨年実施した世論調査によると、「最高裁を評価する」と回答した人は44%だったのに対し、「評価せず」が過半数を占めた。信頼度は1昨年度調査時から14%も下落した。
国民の不信が高まった背景には、最高裁が、国民の大半が永年支持してきた女性の「妊娠中絶」選択権や一般市民の銃砲所持規制強化措置などについて相次いで却下の裁定を下したことが挙げられる。
こうした中で、最高裁がさらに、選挙という正当な手続きをへて選ばれたバイデン大統領の就任を否認し続け、選挙結果最終承認審議中の連邦議会乱入事件を扇動したとして起訴されたトランプ氏に対しあえて「大統領免責特権」賦与の決定を下すとすれば、多くの一般市民を巻き込んだ大規模抗議運動にも発展しかねない。
トランプ免責の判断は大統領選後か
このような事情を考慮すると、最高裁としては結局、共和党寄りの判事が多数を占めているとはいえ、最終的にはトランプ氏が求めてきた免責を退ける判断を下さざるを得なくなる可能性がより高い。
しかしその場合でも、可能な限り結論を先延ばしし、連邦地裁での公判と判決言い渡しが11月大統領選挙後となるタイミングを視野に入れているとみられる。
そしてもし、トランプ被告が選挙で勝利し、ホワイトハウス返り咲きを果たせば、25年1月20日の大統領就任とともに、これまでの検察側による捜査自体をただちに停止させる強権発動に出るシナリオも否定できない。