2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年11月13日

 米陸軍士官学校戦略研究所のライ(Vavid Lai)教授が、同大学のウェブサイトに、「中国の“大国関係の新しいモデル”への疑問」という論説を10月3日付で掲載しています。

 すなわち、大国関係の新モデルというキャッチフレーズが中国ではよく使われている。6月のオバマ・習非公式会談でも習がそのフレーズを言った。

 米側の記事資料には習発言は言及されていないが、中国メディアでは習発言は良く紹介されている。楊前外相によると、習の発言の要点は次の通り。

 第1:中国の台頭により力の移行が生じている。歴史的にはそういう力の移行は戦争になったが、米中戦争は避けられる。

 第2:中国の平和的発展の誓いはそれを可能にする。中国は米国の優位性に挑戦せず、米国主導の国際秩序を変えようとせず、資源確保のために武力を使わない。

 その上で、習は、米中関係、大国関係一般について次の3点を提案した。

 第1:衝突や対抗を避けること。

 第2:相互に尊重すること。社会政治システムの選択を尊重し、双方の核心的利益を尊重し、調和を求め、互いに学び、ともに進歩すること。

 第3:協力とウイン・ウインを目指すこと。ゼロサム思考をやめること。

 この3点は、特に何か新しいことを言っているわけではない。主権尊重など、中国がよく言ってきた平和共存5原則の繰り返しである。

 米国が中国の核心的利益(主権、安保、領土、国家統一、中国の憲法の定める政治システム、社会的安定、社会経済発展)を尊重することが最も重要なポイントである。しかし米国としてこの要請に応じることは難しい。

 例えば、米国は、民主化、人権の尊重を進めようとしており、中国共産党の権威主義尊重はそれに矛盾する。イデオロギー問題はさておいても、米中は領土問題や国家統一問題でも問題を抱える。習は核心的利益で妥協しないとしている。しかし米国は、東シナ海、南シナ海での中国の領土主張を是認したことはないし、台湾との統一を是認したこともない。


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