中国の指導者は、米中間の不信、中国の議論の余地ある核心的利益に鑑み、米国が中国の提案を受け入れられないことを知るべきである。米国人は中国の平和への呼びかけが心からのものか、意図を隠して復讐の時を待っているのか、怪しんでいる。
さらに中国の指導者は、彼らの新しい大国関係の考え方が、中身の伴わないものでしかないことを知るべきである。3つの提案とも、大国間関係の指導原則にはならない。
最後に、中国の指導部が自分の発展モデルや政治システムに過剰な自信を持つのは馬鹿げている。意図は能力に比例して変わるというが、中国にもそれは当てはまる。中国の力が強くなった時に、意図が変わらない保証はない。それが力の移行に伴う危険である、と論じています。
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この論説の筆者は、中国で生まれ育った人で、文化革命も経験した人であるとされています。米中非公式会談の内容を、中国メディアの報道ぶりから推測して書いた論説ですが、こういう分析は役に立ちます。この論説を読むと、先の非公式な米中会談は、両者がかみ合った議論をした会談であったとはとても思えません。
脅威とは意図と能力の関数である、とよく言われます。この点、中国側は「悪い意図はないからいくら軍備を増強しても脅威ではない」という議論をしたようです。平和的台頭の誓いをしているから心配はいらない、というような議論を繰り返されて、さすがにオバマも閉口したのではないかと想像されます。
冷戦時のソ連と同様、中国については、言葉より行動を見るべきです。平和的台頭と言いながら、軍備増強を急速に進め、東シナ海、南シナ海で領土主張をしているのを見ると、とても中国の言葉を信じるわけにはいきません。日本の戦後のあり方こそ、行き過ぎとさえいえる平和憲法もあり、まさに平和的台頭でしたが、そういう自制は、もとより中国にはありません。
中国が言う体制選択の尊重は、明らかに米国の人権尊重要求に対抗して出されている議論です。米国は、人権尊重は普遍的価値であるという現在の国際社会の主流の考え方を確立することに努力をしてきました。人権より主権を尊重すべしという中国の言い分は古い考えで、それを米国が受け入れるわけにはいかないでしょう。さらに、中国が「核心的利益」では妥協はしないということに、米が同調することもないでしょう。
論説の言う通り、新しい大国関係という概念が、今後米中両国関係を律するようなものになることはほぼ考えられません。また、米中緊密化を過度に心配する必要もないと思います。
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