同様に、中部トムスク州では投票率を挙げる仕組みとして、投票した有権者に「エメラルドハート」宝くじを付与することが行われている。初日の15日に投票した人は3回、宝くじに参加でき、最終日の17日に投票した人は1回しかできない。情報提供者は「3月15日に投票率を上げることを目的としたイベントだ」と指摘する。
クルガン州では、この選挙に「家族に春が来た」という宝くじキャンペーンが行われており、投票者に「スマートフォン、スクーター、家電、車、さらには市内のアパート」などが当たるという。
ロシアでは投票所やその近くに選挙運動資料を置くことが禁止されている。
中部バシコルスタン共和国タトリバエヴォの投票所では、投票箱の上に地元の首長とプーチン氏の写真が並んで掲載されている。人々は投票する際に記念撮影をすることも許されており、この地区では投票を済ませた有権者たちが次々に「投票箱の上にあるプーチン」写真をSNSに挙げている。
こうした事例は、公的施設が投票所に使われているためで、そもそもそうした施設にプーチン氏の写真が掲げられ、投票が始まっても撤去されなかったことが原因とみられる。ゴロスのサイトには、北部ムルマンスク州選管が公式声明で投票所のプーチン写真は国家の象徴であり、違法な選挙活動ではないと判断したとも伝えている。
「反対運動」を摘む圧力
プーチン政権は今回、投票率70%、得票率80%という高い目標を設定し、戦争を継続するプーチンのロシアが一枚岩であることを見せようとしている。
投票率を上げる最も効率いいやり方が、全労働者数の3割を占めるとされる公務員や公共インフラの従業員に投票を強要することだ。これまでのロシアの選挙でも公的機関の上司らに投票と投票した証拠を提出するよう強制された実態がゴロスによって明らかになっている。
反体制指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏(2月に獄中死)のグループは、プーチン体制に抗議するため、3日目の17日に正午に投票所に集合し、プーチン大統領以外に投票しようと呼びかけた。「正午の反プーチン」キャンペーンだ。
しかし、政権側は有権者の3割、4割(3000万~4000万人ほどか?)とされる公務員と、国営企業の従業員に初日の15日正午までに投票を義務付けたようだ。「正午の反プーチン」ならぬ「投票第1日の親プーチン」だ。
ゴロスにもその実態が告発されている。
中部サマーラ州の「社会保障局」では初日の15日正午まで従業員全員に投票することを強制、2日目の16日、3日目の17日に投票することを認めないと命じた。従業員は投票所からの写真を撮って、ハッシュタグをつけてSNS上の公開することも強要され、さらに投票に行かなかった人はボーナスをはく奪することも示唆されているという。
ゴロスは各州や地方自治体などの公的機関がソーシャルネットワークを利用して、プーチン大統領を支持するキャンペーンを行っていると指摘している。投票前の3月14日に外務省のSNSがプーチン大統領の演説を掲載したことを問題視している。公的機関が、ほかの3人の候補者の演説をSNSで紹介した例はないからだ。
その結果、シベリアの各地域では2日目が終わった時点で、投票率が90%を超えた地域が続出した。異例の結果にはこうした圧力がかかったことをうかがわせる。
当局は「正午の反プーチン」の動きにも目を光らせた。