2024年5月11日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月25日

 中国にとりもうひとつ好都合な要因は恐怖だ。親中派は、パラオを中国の標的にしてはならないと主張する。この議論は効果的だ。

 ホイップスは米国に米国の在パラオOTHレーダー防衛のためのパトリオット迎撃ミサイル部隊の展開を要請した。しかし昨年11月、パラオ上院はその部隊展開を拒否する決議を採択した。中国はレーダー建設地近くにホテルとカジノの建設を申し出た。

 中国がソロモン諸島を支配下に入れたことは、コンパクト三国に対する警告だ。中国は、豊富なカネを政府・議会関係者にばら撒き、嘗て民主主義国だった同国を権威主義国家に変える道を着々と進めている。中国の新たな友人となったソガバレ(首相)は、2022年には次の総選挙を延期した。

 中国は、太平洋を自らの保護区にしようとしている。他方で、米議会は、米国の財政負担を果たさないことにより、中国による米国の最も忠実な同盟国の反米化を許してしまっている。

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切迫する島嶼国

 上記の論説が出た後、3月8日にようやくミクロネシア3国への支援の予算が米議会で承認された。承認は一安心ではあるが、遅延が損ねた米国への信頼を回復することは容易ではないだろう。米議会がウクライナ支援や中東等を政争の具にし、そこに太平洋島嶼国支援が巻き込まれている実態は、残念と言う他ない。

 中国はその野心を進めている。太平洋でカネにまかせた中国ドミノが起こらないとも限らない。

 マーシャル諸島のハイネ大統領(女性、1月大統領に返り咲いた)は、2月末ガーディアン紙に、「対米関係は米議会の政党政治のために徐々に壊されつつある」、「米国が合意した資金は米国の寛容により合意されたものではなく、当事者間の厳しい交渉の結果合意されたものだということを米議会は理解すべきだ」と述べた。

 その後、3月1日のビキニ70周年集会演説ではもっと先鋭に、「米議会はコンパクト三国への資金承認もしないで2週間の休会に入った。今、米国との関係は岐路にある」と述べるとともに、他の地域プレーヤーがマーシャルとの関係を築きたいと熱心になっていることを示唆して、「米国がわれわれへの約束を果たさないのであれば、われわれは他の選択肢を真剣に検討する必要が出てくる。マーシャルが米国の確固たる同盟国であることを当然視してはならない」と述べた。


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