2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年3月25日

 米国とミクロネシア3国(ミクロネシア、マーシャル諸島共和国、パラオ共和国)は昨年、コンパクト合意と呼ばれる資金提供プログラムを20年延長することで合意した。しかし、コンパクト合意に基づく支援予算の米議会での承認が大幅に遅れ、島嶼国側からも米国内からも懸念が高まっていた。

(SMSka/Golden Sikorka/seungyeon kim/gettyimages)

 “The Coming Collapse of China”(邦題:『やがて中国の崩壊が始まる』)の著者である著述家のゴードン・チャンは、2月23日付けワシントンポスト紙掲載の論説‘Congressional inaction is handing the Pacific to China’で、米議会のミクロネシア3国支援承認の遅れは太平洋を中国に渡すことになる、と批判している。主要点は次の通り。

 米議会は、最も親しい同盟国に対する財政支援約束を果たしておらず、重要な友好国を見捨てることになっている。中国はパラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島を取り込もうとしており、それが成功すれば中国軍は太平洋の広大な水域を支配することになる。

 そうなると、新しい港や基地に展開される中国軍は、民間か軍用かを問わず、この海域を航行する米の船舶や航空機を阻止することができる。更に中国はハワイやグアム等米領土を攻撃できる施設を手に入れる。

 昨年これら三国とのコンパクト協定が再交渉され、20年の延長が合意された。しかし、米議会は未だ米の資金提供義務を承認していない。12月に可決された2024年国防権限法にはこれら三国への資金支払いは含まれなかった。2月13日に上院で可決され法案にはウクライナ、イスラエル、台湾向けの953億ドルが含まれたが、コンパクト三国への資金予算は含まれなかった。

 コンパクト三国への米の資金提供義務は、次の20年間で合計71億ドル、現在米議会は協定の資金提供履行のために23億ドルを承認する必要がある。ミクロネシアとマーシャル諸島は目下米繋ぎ予算決議の下で一部の資金を受け取っている。パラオへの資金提供は現在最小限に削減されている。

 中国は、これら三国の指導者に対し米国を見捨てるように働きかけている。中国は、機能不全の米国は信頼できないパートナーになったと説いている。11月に再選を控えるパラオの親米派のホイップス大統領は、中国の資金攻勢に最も脆弱だ。中国の資金を得るためには、パラオは外交承認を台北から北京に切り替えることが必要とされる。ミクロネシアは中国を承認、2019年にはキリバスとソロモン諸島が台湾承認を撤回した。その裏に中国による資金約束があったことは疑いない。


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