2024年12月10日(火)

プーチンのロシア

2024年3月26日

 正しく深刻なテロ事件が起きた。3月22日、モスクワ郊外のコンサートホールで銃撃が発生し、200人以上の死傷者が出た。事件の真相は不明だが、わずか1週間前にプーチン大統領が国民の87%の支持を得て再選されたばかりの出来事だ。

モスクワテロを受け、ビデオ演説するプーチン大統領(代表撮影/ロイター/アフロ)

 鉄壁のロシアの治安という神話が一つ崩壊したといえる。「ロシア国民は自分に黙ってついて行けば万事大丈夫だ」というプーチン大統領の国民へのメッセージも大きく揺らいだ。 警察治安国家ロシアの信頼が揺らいだと言える。

プーチン圧勝でもなくならない「崩壊論」

 ロシア大統領選挙のプーチン圧勝に、欧米からは公正な選挙ではないという批判が相次いだ。選挙の前にプーチン大統領の最大の政敵アレクセイ・ナワリヌイ氏が獄中で急死した。また反戦を掲げて立候補したボリス・ナデジディン氏には、出馬に必要な署名に不備があったとして立候補資格が与えられなかった。

 しかし、ぺスコフ報道官は 「ロシアの民主主義は世界一だ。 批判は許さない」と宣言していた('Kremlin: Russia’s democracy is ‘the best’ in the world' POLITICO, MARCH 6, 2024)。 ロシアは世界の民主主義ランキングで既に大幅に順位を下げている('Russia suffers biggest global fall in the Democracy Index following its invasion of Ukraine' Thu, 02nd Feb 2023)。ランキングをまとめているエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)は2023年、ロシアを167カ国中114位とした。これはニカラグアやベネズエラよりも下だ。

 また、アメリカのシンクタンクFreedom Houseはロシアを「自由ではない国」としている。「政治的権利」は40点満点中4点で、「選挙」は自由かつ公正ではなく、「政府」は透明性を欠き、「汚職に対するセーフガード」はほとんど無いという。

  現代ロシアの研究者として世界的に令名の高いアレクサンダー・モティル博士(ラトガース・ニューアーク大学教授)は2024年1月、「ロシアはいつ最終的に崩壊するか?」と題する論文(’When Will Russia Finally Collapse?’ Alexander J. Motyl, The National Interest, January 9,2024)を発表した。要旨はこうである。


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