チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年11月14日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

事件の前週、ジュネーブで起きていたこと

 「天安門でケガをされた日本人の方へ心からお見舞いを申し上げたい。また、事件後に、日本の新聞記者の皆さんが東トルキスタンへ入り、ウイグル人の肉声を含むさまざまな情報を報道してくださったと聞いています。そのことに感謝申し上げたい」

 インタビューの冒頭、ラビア女史は「まず日本の皆さんに伝えたいことがある」といって、この2点を述べた。たしかに、今回の事件についての日本での報道は、ウイグル人に同情的、つまり中国側の発表に懐疑的な論調が多く、新聞社等の記者が新疆ウイグル自治区各地へ飛んで得た情報も比較的多かったように思う。

 筆者が電話取材した先週末、ラビア女史はニューヨークの国連本部への出張から戻ったばかりだった。国連での活動の主旨は、「中国の国連人権理事会入り反対」である。音頭をとったのは、ニューヨークと香港に拠点を置く「中国人権」という国際人権団体であった。

 2006年、それまでの国連人権委員会の発展的解消を経て設立された国連人権理事会の理事国は3年に1度、3分の1ずつ改選される。折しも昨日(現地時間の11月12日)、ニューヨークで開かれる国連総会の場で選挙が実施された。

 過去6年間、理事国を務めてきた中国は、今回も当然のように立候補した。あるウイグル人はこのことを、「世界の人権状況を監視し、人権侵害をなくすことを目指す機関の理事を、世界最大、最悪の人権侵害国家が務め続けるとは、一体どんな悪い冗談か」と苦笑交じりに評したが、その悪い冗談を終わらせるべく、中国人人権活動家やチベット、ウイグルの活動家らが力を合わせ、「チャイナ ゲットアウト(中国を人権理事会から追い出す)」の活動を展開してきたというわけだ。

 その活動の“ヤマ場”ともいうべき場面が、天安門での事件の前の週にあった。先月22日から数日間、中国の人権状況についての「普遍的定期審査」がジュネーブで行われていたのである。

 「世界ウイグル会議から4人が出向いて、東トルキスタンの厳しい実情を訴えました。しかし、中国側はわれわれの何十倍もの大人数を送り込んで、まさに「数」の力で審査の場を席巻、圧倒しようとしていました」

 とラビア女史。一例だが、「子供の権利」について審査する会場では、48人もの中国の大代表団が席を占め、「ウイグルの子供に人権上の問題は何らない。優れた教育環境が整えられている」との主張を声高に展開したという。

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