米中のはざ間で翻弄され続ける
前述のとおり、ラビア女史は米国に亡命中であり、世界ウイグル会議の活動資金の大半が「全米民主主義基金」なる団体から出ている。かつて米国は彼女自身を中国から救い出し、亡命後は、彼女が代表を務める複数のウイグル団体を財政的に支援してきたわけだが、その一方で、イラク開戦等の折から、北京の協力を得るためのいわば交換条件としてきた、ウイグル人を「テロリスト」とするという「仕掛け」に応じてきた。
しかも米国は、世界ウイグル会議を中心にしたウイグル人らの活動に関し「金は出すが、口は出さない」わけではけっしてなく、あたかも彼らを懐柔しつつ監視するかのように「干渉」し続けている。こうした一筋縄でいかない米国との関係があるだけに、ウイグル人活動家らが日本に寄せる期待には一種特別な思いがこもる。
もっとも、ウイグル人らの活動が、たとえばチベットと比べても活動基盤がぜい弱で、将来ビジョンも曖昧、民族としての連帯・団結が弱いだけに、容易に大国の思惑に翻弄されてしまうという要素も否定できない。時折、日本のなかで、「日本政府はウイグル人の組織に対し資金援助すべきだ。それが日本の国益にかなう」との論など見かけるが、現状、筆者はこれに首を傾げざるを得ない。方向性の不明確な「活動」に公金をつぎ込むことを焦らずとも、日本ができる支援はたくさんある。
「天安門での事件後、東トルキスタンの複数の街で大勢の若いウイグル人が理由も告げられないまま連行・拘留されているとの情報があります。こうしたウイグル人への弾圧をやめるよう中国政府に圧力をかける、そんな新たな国際的な枠組みを、日本政府が中心になってつくっていただけないものでしょうか。これまで欧米の国々が働きかけてくださってきましたが、アジアの中から強い働きかけがあればいっそう心強い」
ラビア女史は、今後、日本にお願いしたいこととしてこう訴えた。日本政府を動かすのは、ほかならないわれわれ日本国民である。祖国を追われた人たちに「公金を出せ」と安易に言うよりも、日本の「良心」を国際社会に強く示すことで中国に圧力をかけよ、と、わが国政府に向かって言うことのほうがはるかに有効だ、と筆者も思う。
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