2024年6月15日(土)

食の「危険」情報の真実

2024年4月10日

サプリメントが危険なのか?

 同様に、健康被害はサプリメントゆえに起きたわけではないが、週刊文春は4月11日号でさっそく今回の事案にからめて「危ないサプリ」と題した特集を組んでいた。

 これも打ち明けるが、筆者も当初、今回のように多くの人が健康被害となったのはサプリメントゆえと思っていた。特定の成分を濃縮させたサプリは、野菜や肉など通常の食品よりも容易に多量を摂ってしまいやすく、食品安全委員会も注意を呼び掛けていたからだ。ただ、このサプリの摂取者に健康被害が多いのは、問題となったサプリを多くの人が摂取したことによるものだ。

 昨年9月に青森県八戸市の駅弁を原因とする集団食中毒では500人以上の健康被害が出た。通常の食品でも、たくさんの人が食べていれば健康被害を起こす人が多くなる。サプリだからではない。

 サプリに厳しい目が向けられるのは、日本では比較的新しい食品であることが関係しているかもしれない。特定の成分を濃縮して錠剤・カプセル状にしたサプリメントを健康食品でも使えるようになったのは約20年前。それ以前は錠剤・カプセル形状の製品は「医薬品」に分類され、「食品」として使用することが禁じられていた。食品でもこれらの形状の販売が可能になったのは2001年に保健機能食品制度が発足してからで、背景には米国からの市場開放の圧力があった。

 「規制緩和」「米国の圧力」と聞けば、それに原因があると考えたくなる気持ちは分からなくはない。しかし、小林製薬の健康被害は異物混入が原因だ。そして食品への異物混入はサプリメントだけでなくさまざまな食品で起きている。

 例えば、腸管出血性大腸菌やノロウイルス、アニサキスなども本来混入してはいけない〝異物〟で、肉や野菜など通常の食品に混入して食中毒を引き起こしている。そう考えれば、サプリメントだけをことさら危険視するのは問題だろう。

 健康被害が起きる異物混入を防ぐなど、食品の安全を守るために、21年施行の食品衛生法改正でHACCP(危害要因分析重要管理点)が導入された。すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が求められている。

 小林製薬もHACCPに添ってサプリメントの製造をしていた。にもかかわらず、混入が起きた。これについては、後半にある唐木名誉教授のインタビューを参照してほしい。

長い食経験ある紅麹

 今回の事案で最も風評被害を受けているのは紅麹を使った食品ではないだろうか。もちろん、小林製薬が最初に会見を行ったときには何が原因か分からなかったので、サプリの主成分である紅麹を危険と思うのは普通の反応だ。しかし、3月29日の会見で、健康被害と関係が疑われる「未知の成分」は青カビがつくるプベルル酸である可能性が高いことが分かり、紅麹との関連は否定されている。

 紅麹は古代から中国や台湾で紅酒、紅豆腐などの発酵食品に用いられ、日本でも沖縄の「豆腐よう」などを作るのに使われてきた。また、紅麹から作られるベニコウジ色素は、数十年にわたり着色料として菓子や漬物などさまざまな食品に使われている。


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