2024年11月22日(金)

21世紀の安全保障論

2024年4月15日

日米の連携強化は必然

 指揮統制強化の発端は、自衛隊が陸海空や宇宙、サイバーなどさまざまな領域を担う部隊を一元的に指揮する統合作戦司令部を24年度末に発足することだ。現在、そのカウンターパートとなる米軍の司令部は、米ハワイのインド太平洋軍だが、日本とハワイとの時差や距離などを考えれば、有事が発生した時や、東アジアの情勢が緊迫した場合には、日米の連携に不安が残るという課題を乗り越えようというのが、今回の司令部機能の強化だ。

 現在、自衛隊は22年末に策定した「国家安全保障戦略」などに基づき、反撃能力を保有するなど防衛力強化を進めている。例えば、米軍が中国や北朝鮮のミサイル発射に対して、衛星などを使って偵察、監視し、探知するという状況下で、自衛隊が米軍からの情報で迎撃ミサイルを発射し、反撃能力を行使するといったことが現実味を帯びてくる。その場合に重要となるのが、日米の司令部機能の強化であり、指揮統制となる。

言葉ではなく、具体的な中身を示せ

 ただし問題もある。仮に自衛隊が米軍の指揮命令で動くことになれば、他国の武力行使との一体化を禁じた憲法上の疑義が生じかねない。日米の連携は必須なだけに、政府は国民に対し、具体的な連携の形を示し、運用についてきちんと説明する必要がある。

 なぜなら米韓同盟では、在韓米軍のトップが米韓連合軍の司令官を務め、戦時の作戦統制権は米軍が保有し、韓国軍はその指揮下で活動するという仕組みになっているからだ。

 日米連携の仕組み作りは、5月にも開催が予定される日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で議論されることになるが、政府は議論の推移を説明しなければならない。具体的には、在日米軍の空軍と海軍、海兵隊がそれぞれ持っている司令部機能を、どのように統合強化し、強化された司令部と自衛隊の統合作戦司令部はどのように連携するのか、といった内容について、平時と想定される具体的な場面(有事)を交えながら、国民の理解を得る必要がある。それが抑止力を高め、日本の安全につながる手立てだからだ。

 岸田首相は首脳会談後の記者会見で「日米同盟の抑止力、対処力の一層の強化が急務だ」と述べている。そんな言い古された紋切り型の言葉では何も伝わらない。

 いま政府に求められていることは、「一層の強化」という言葉の具体的な方策と中身だ。説明不足で頓挫した沖縄の訓練場の失態を繰り返してはならない。

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