2024年12月9日(月)

21世紀の安全保障論

2024年3月4日

 「不安が現実に」「配備に再び疑問符」……。昨年11月29日、米空軍の輸送機CV22オスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落、乗員8人全員が死亡した事故で、新聞各紙が翌30日朝刊で報じた見出しの多くは、オスプレイの危険性を強調する内容となった。

飛行停止となり目達原駐屯地の格納庫で翼を休める陸自オスプレイ(筆者撮影、以下同)

 折しも事故当日、陸上自衛隊は佐賀空港へのオスプレイ配備に向け、近傍にある目達原駐屯地において周辺自治体の関係者を招いた機体公開を実施し、30日には訓練飛行も予定していた。しかし、事故で訓練飛行は中止となり、直後に米軍がオスプレイの飛行停止を決めたことで、筆者が視察した2月21日の時点でも、機体公開等のために千葉・木更津駐屯地から飛来した陸自のV22オスプレイは、目達原駐屯地の格納庫で翼を休めていた。

刷り込まれてしまった「危険」イメージ

 「米軍の安全に対する意識は極めて高い」――。オスプレイを操縦する陸自のパイロットはそう言って説明を開始した。通常はオートパイロット(自動航法装置)で飛行し、仮に片方のエンジンがトラブルで止まっても、稼働する片方のエンジンシステムで、停止した翼を回し続けることができるといったこともその一つだという。

 「米軍はこれまでに何度も改良を加えており、われわれもオスプレイの安全性の高さには自信を持っている」と陸自パイロットは話し、「何かトラブルが起きれば、真っ先に死と直面する。自信がなければ操縦できません」と言葉をつないだ。

 固定翼機とヘリコプターのような回転翼機の特徴を兼ね備えるオスプレイを巡っては、開発段階の1990年代から2000年にかけて墜落、死亡事故が相次いだほか、米海兵隊が沖縄へのオスプレイ配備を決める12年前後にもモロッコなどで墜落事故が発生するなどしたため、国内では「オスプレイは危ない」というイメージが刷り込まれてしまった。

 だが冷静に考えれば、自らの生命に直結する航空機の安全性に最も注意を払っているのは、運用する米軍であり自衛隊自身のはずだ。政府がオスプレイの導入を決めた14年度以降、陸自ではヘリやLR連絡機のパイロットからオスプレイの操縦士を選抜、米海兵隊の教育訓練課程を修了するなどして機体の安全性を再確認している。


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