事故を機に、日米の情報共有が深化
11月の事故後、原因を徹底究明するため米軍は空軍と海軍、海兵隊で使用する全てのオスプレイの飛行を停止している。オスプレイは米海兵隊や陸自が使用する機体と、米空軍の機体とでは装備等に多少の違いはあるものの、全てのオスプレイを停止したということは、墜落事故は人為的なミスではなく、機体そのものに何らかの不具合(欠陥)があった可能性が高いということだろう。
事故から3カ月が経過した2月末の時点で、飛行再開のめどは立っていない。オスプレイの飛行停止は米軍の緊急展開能力を大きく損ない、日本の平和と安全にも直結する事態であり、早急な原因の解明と公表、そして飛行の再開は必須だろう。
そうした中、事故後、米軍は陸自との間で情報共有を強化し、毎週水曜日には互いの担当者同士が米・ワシントンと防衛省をオンラインで結び、調査の途中経過を含めて意見交換しているという。「極めて異例の対応」と陸自幹部は指摘、「原因をはっきりさせ、安全性への理解につなげたいとの思いを感じる」と話す。
過去、在日米軍が日本国内やその周辺で事故やトラブルを起こすたびに、原因究明や再発防止策を巡って日本が蚊帳の外に置かれることが多かっただけに、今回の事故を機に、日米双方の運用者が対等な立場で、率直に意見を言い合える環境が整いつつあることは高く評価したいと思う。
佐賀空港に配備する安全保障上のメリット
そもそも米軍がオスプレイを沖縄に配備したのは、従来の米軍輸送ヘリに比べ、速度は2倍、搭載量は3倍、航続距離は約2600キロメートルに達し、空中給油も可能で行動半径が飛躍的に伸びるという能力の高さであり、沖縄からフィリピンにかけての西太平洋地域を重要視し、緊急展開力によって中国の海洋進出や海空軍の活動を抑止するためだ。
歩調を合わせるように、陸自も尖閣諸島(沖縄県石垣市)への領海侵入を繰り返す中国を念頭に、離島防衛の要となる「水陸機動団」(当時の部隊名は西方普通科連隊:長崎県佐世保市)の輸送を主目的に、オスプレイの配備へと舵を切った。