「処理水問題の影響はほとんど見当たりませんでした。探すのが大変なぐらいでしたよ」
上海市在住の日本人駐在員Aさんのぼやきだ。普段からよく筆者の記事を読んでくれている熱心な読者なのだが、大きな話題となっている福島第一原発処理水の海洋放出から約10日間となる9月3日に日本人街に出かける用事があり、「写真を撮ってきましょうか」と連絡してくれた。
「抗議活動をしている人はいるか?」「日系スーパーの客入り」「日本食材を使っていませんとの貼り紙はあるか」「(日本人街に限らず)買い占めで売り場から塩が消えていないか」あたりに着目して見てきてほしいとお願いしてきた。
Aさんが向かったのは上海市西部の虹橋地区。日本人駐在員が多く、日系のレストランやショップが数多く集まる地域だ。すごい光景が展開されているのでは……と意気込んで向かったAさんだが、行ってみると冒頭の感想になったという次第だ。
「日系スーパーにはちょくちょく来ていますけど、前と客入りは変わらないように見えます。中国人も減っていません」(Aさん)
日本食が食べたい日本人駐在員にとっては天国のような日系スーパー、日本食レストランだが、実は客数で見ると中国人のほうが圧倒的に多い。中国でももっとも平均所得が高い上海市だけに、〝本場〟の日本食、食材がある日本人街を訪れる人は多い。処理水のニュースもなんのその、にぎわいは変わっていないという。
Aさんの訪問の1週間前、海洋放出直後の週末となった8月25日、26日の時点でも、北京市や広東省の日本食レストラン経営者によると、客入りは2~3割減程度でとどまっていたという。
「日本食材は使っていませんと張り出しているレストランはありました。でも、数十店舗並んでいる中でたった2軒だけ、探すのは大変でしたよ」(Aさん)
リクエストに応じてがんばって探し回ってくれたらしい。律儀だ。