2024年5月13日(月)

21世紀の安全保障論

2024年3月4日

 海難事故や自然災害、急患の発生時にどんな活動が可能なのか、配備前と何がどう違うのか――。配備を機に、地元で行われる防災訓練や住民説明会などを通じて、佐賀県民はもとより九州各地の人々に知ってもらう広報活動は必須だ。防衛省・自衛隊には、これまでにない斬新な広報戦略を構想し、多くの人々の理解を得るための知恵と工夫が求められている。

正念場はこれから、計画の変更も柔軟に

 もう一つは、部隊を緊急展開する軍事的な視点からの課題だ。現在、防衛省が考えている佐賀配備の内容は、木更津から移駐するオスプレイ17機に加え、市街化が進む近傍の目達原駐屯地に配備されているUH60などの多用途ヘリ部隊と、AH64Dを中核とする戦闘ヘリ部隊など約50機のヘリを段階的に新駐屯地に移し、佐賀空港を拠点に運用する計画だ。

 だが、現地を見て率直に感じたのは、最終的に70機近くの機体を移駐させるという規模が大きすぎるのではないか、という懸念だった。約33ヘクタールという広大な敷地に庁舎と官舎、駐機場、大中3棟の格納庫などが建設されているが、とても大半の機体を格納庫に収容できるスペースはなく、荒天時を考えれば懸念は増すばかりだった。

空港管制塔の奥に広がる新駐屯地建設現場

 また運用面を考えても、オスプレイが水陸機動団を載せて尖閣諸島などの離島に緊急展開する場合、攻撃能力の高い戦闘ヘリが護衛することになる。しかし、オスプレイの速力に追い着くことができない戦闘ヘリは、飛行経路上で待機して護衛しなければならない。

 だとすれば、まずは佐賀空港にはオスプレイ17機だけを移駐させ、目達原駐屯地に多用途ヘリの部隊を残し、戦闘ヘリ部隊は南西諸島への移駐も視野に入れたらどうだろう。

 南西諸島防衛の強化は喫緊の課題であり、陸自は19年以降、鹿児島県の奄美大島、沖縄県の宮古、石垣の両島に部隊を配備、初動体制の強化に取り組んできた。オスプレイの佐賀配備はその中核であり、本格的な南西防衛のスタートと言ってもいい。

 まさに、これからが正念場だ。陸自には計画の変更も選択肢として、柔軟な発想で取り組んでほしいと思う。

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