2024年4月30日(火)

BBC News

2024年4月16日

米ニューメキシコ州で2021年に映画の撮影中、俳優アレック・ボールドウィン被告(65)が小道具の拳銃を発砲し、撮影監督ら2人が死傷した事件で、同州の裁判所は15日、撮影の武器担当だったハナ・グティレス=リード被告(26)に禁錮1年6カ月の刑を言い渡した。

同州にある西部劇のセットで行われていた映画「Rust」の撮影では、ボールドウィン被告がリハーサル中に使用した小道具の拳銃から実弾が発射された。これにより撮影監督のハリナ・ハッチンスさん(42)が死亡し、監督のジョエル・ソウザさんがけがを負った。

ボールドウィン被告も過失致死罪に問われており、7月に裁判を控えている。これまで無罪を主張している。

グティレス=リード被告は今年3月に過失致死罪で有罪評決を受けた。証拠改ざんの罪にも問われたが、そちらについては無罪とされた。

この日、同被告に言い渡された量刑は、有罪とされた罪状としては最大限のもの。

メアリー・マーロウ・ソマー判事は、同被告の犯した行為について、物理的に暴力的な方法での重大な暴力犯罪だと結論。「あなたは一人で、安全な武器を致命的な武器に変えた。あなたがいなければ、ハッチンスさんは生きていただろう。夫はパートナーがいて、小さな男の子は母親がいただろう」と述べた。

「責任を取るという言葉なかった」

グティレス=リード被告はこの日の法廷で、量刑が言い渡される前、ハッチンスさんの家族や友人のことを思うと胸が痛むと心境を語った。また、「陪審は私を有罪と評決した。だからといって私が怪物というわけではない。私は人間だ」と涙ながらに訴えた。

これに対しソマー判事は、「あなたから責任を取るという言葉を聞くことはなかった」と述べた。

ハッチンスさんの母親と姉妹の1人も、母国ウクライナのキーウから録画によるビデオ陳述をした。母親オルガ・ソロヴェイさんは、娘の死に関わった誰ひとりとして、お悔やみの言葉をかけてくれなかったと主張。「私にとっては正義があることがとても大事だ」と述べた。

検察と弁護側の主張

3月に評決が出された裁判では、検察がグティレス=リード被告について、銃にダミー弾しか込められていないことの確認を怠ったと主張。撮影現場で弾薬の箱の中に実弾とダミー弾が混ざっていたことに気づかなかったのは、同被告の「過失」、「不注意」、「軽率」だったと陪審に説明した。

また、同被告がカリフォルニア州の自宅からニューメキシコ州の撮影現場に実弾の箱を持ち込んだとする証拠を提出。実弾はその後の12日間で徐々に撮影現場全体に広がったとした。

ただ、同被告が意図的に撮影現場に実弾を持ち込んだとはみておらず、ハッチンスさんの死は悲劇的な過失だったと考えているとした。

一方、グティレス=リード被告は2週間にわたった裁判で、自ら証言することはなかった。弁護士は、撮影現場に実弾があったことを同被告は知らなかったと主張。ボールドウィン被告が撮影スタッフに銃を向けたのは「台本から外れた」ことだったと訴えた。

弁護士は最終弁論で、同被告が唯一の責任者だと検察は証明できなかったと主張した。

グティレス=リード被告側は、有罪評決を不服とし、控訴する方針を表明している。

映画「Rust」のキャストとスタッフは昨年、ハッチンスさんへの追悼から撮影を完了させた。ハッチンスさんの夫がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。

(英語記事 Hannah Gutierrez-Reed: Rust armourer sentenced to 18 months for Halyna Hutchins' death

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/ckmjr8gr3rmo


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