2024年4月30日(火)

BBC News

2024年4月17日

ジヤル・ゴル、ベフラング・タジディン、BBCペルシャ語

イランによるイスラエルへの前例のない直接攻撃から2日がたった。イランの首都テヘランはいま、緊張に包まれている。

かなりの割合のイラン国民が、今後起こり得る戦争、そしてすでに後退しつつあるイラン経済への影響を懸念している。14日未明に300以上のドローン(無人機)やミサイルを発射したイランの精鋭部隊、革命防衛隊(IRGC)の無謀な冒険主義に、国民は反発している。

イラン内外にいる多数の活動家らは、BBCペルシャ語への書簡で、「戦争挑発行為に反対!」とIRGCの行動を批判した。

多くのイラン人はまた、イランとイスラエルの対立はイラン国民の意思を反映したものではなく、イラン政府によって画策されたものだとも考えている。

このような認識があることは、テヘランの街頭に警官が大量に配備されていることからも明らかだ。表向きは、公の場で女性に髪の毛を覆うよう義務づける厳格なイスラム教の服装規定を徹底するための対応だが、多くの人からは、今後起こり得る抗議行動を鎮圧するのが主目的ではないかと疑いの目が向けられている。

大規模抗議や広範な戦争を懸念

イランの治安部隊やIRGC司令部がイスラエルやアメリカとの戦争で打撃を受ければ、2022年に起きたような全国的な抗議行動が再燃しかねないと懸念する政府高官もいる。イランでは当時、頭髪をスカーフで適切に覆っていなかったとしてクルド系のマサ・アミニさん(22)が道徳警察に逮捕され、その後死亡したことをめぐり、大規模な抗議が起きた。

イラン各地の都市では、「イスラエルよ、(イランの)最高指導者(アヤトラ・アリ・ハメネイ師)の家を攻撃せよ」と落書きされた壁が複数見つかっている。「イスラエルよ攻撃せよ、彼ら(イラン)には報復する勇気がない」と書かれたものもある。

イラン政府は「我々の戦場はテヘランじゃない、テルアヴィヴだ」と、政府広告でうたっている。

IRGCが攻撃した直後、イスラム共和国(イラン)の支持者たちはこれを祝福し、「次の一撃はさらに厳しいものになる」とイスラエル人に警告する横断幕がテヘラン市内の建物に掲げられた。

「イスラエルへの攻撃は正しい判断だったと思う。シリアやほかの場所でさらに多くのイラン人司令官が殺害されるのを防ぐために」と、1人の女性はBBCペルシャ語宛てのボイスメッセージで述べた。

しかし別の人は、「イラン人自身が現政権と戦争状態にある。イスラエルを含め、どの国に対しても敵意は抱いていない」と話した。

こうした中、ある女性はより広範な戦争が起きることを懸念していると語った。このような不安感から、イランの人々は食料や燃料などの必需品を買いだめしようと奔走しているようだ。複数の画像には、テヘラン市内のガソリンスタンドの外に行列ができ、スーパーマーケットに買い物客が殺到している様子が写っている。

公式データではインフレ率が40%強に達するなど、多数の国民が生活費の工面に苦しんでいる。そうした中でのイスラエルとの軍事衝突は、多くのイラン人が最も避けたいと思っていたことだった。

イラン・リアルの価値はすでに、イスラエルが在シリア・イラン公館を攻撃したことを受けて対米ドルで安値をつけていたが、IRGCの攻撃後にも下落した。

この軍事的エスカレーションによって、遅かれ早かれ、携帯電話から家電製品、食料品に至るまでの多くの商品価格が高騰するのではないかと、大勢の人が不安に思っている。

イラン政府はパンや燃料など一部の必需品の価格を設定し、多くの品目を優遇為替レート(つまり安い外貨)で輸入している。それでも、多くの商品の価格はいまも公開市場の為替レートに従ったものになっている。

イラン経済はアメリカが2018年にイランの核活動を制限する核合意からの離脱を発表し、特にイランの原油輸出能力を抑制する破壊的な制裁を再び実行して以来、苦境に陥っている。

地元紙の報道

イランの複数の地元紙は16日、イスラエルに自制を求める国際圧力について主に報じていたが、同時に経済への懸念を和らげようとする内容もみられた。

イランメディアは通常、不文律の範囲内ではあるが様々な政治的視点を反映しており、IRGCの行動をおおむね支持している。

イラン紙カヤハンは「イランの力を示すことで経済的平穏」がもたらされると強調した。

強硬派のイラン紙ヴァタネ・エムルーズは、14日夜にイスラエルの呼びかけで開かれた国連安全保障理事会の緊急会合について、イスラエルにとって「孤立の夜」だったとした。一方、革新派のイラン紙アルマネ・エムルーズは、「中東の緊張を終わらせるための世界的な波」だと指摘した。

オンライン上の反応

オンライン上ではイスラム共和国(イラン)の支持者たちが、「侵略者を罰せよ」、「奴らを後悔させた」というペルシャ語のハッシュタグをつけて投稿している。

しかし、ペルシャ語のソーシャルメディア「X」を席巻しているのは「IRGCテロリスト」という英語のハッシュタグつきの批判的な投稿だ。IRGCをテロ組織に指定するよう西側諸国に求める内容や、2022年の全国的な抗議行動でIRGCやほかの治安部隊に殺害されたとする抗議者たちに敬意を表する内容がみられる。

サッカーのイラン代表選手として人気を集めた、イラン国外を拠点とするアリ・カリミ氏は、イスラエル国旗と、1979年のイスラム革命以前に使用されていたイラン国旗が描かれた二つの手が握り合う画像をソーシャルメディアに投稿した。

「我々はイランだ。イスラム共和国ではない」と、カリミ氏は書いた。

(英語記事 Iranians on edge as leaders say 'Tel Aviv is our battleground'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c88z59pl5k0o


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