感覚に頼らない指導
こうした学校の跡地を利用するレンタルスペース事業「KIRINAN BASE(キリナン ベース)」は、不動産総合企業のオープンハウスグループが、同社の地域貢献活動である「地域共創事業」の一つとして、23年にスタートさせた。社員である謝敷正吾さんは、大阪桐蔭高校時代には現・中日ドラゴンズの中田翔選手らと甲子園ベスト4に入った経験があり、現在は桐生市に家族と暮らしながら、レンタルスペース事業を担当する傍らで、桐生南ポニーリーグの監督を務める。
桐生南ポニーリーグは、チームとして野球ラボを活用しており、謝敷さんは「子どもたちが頭を使って、こうやったほうがいいんじゃないかなどと試行錯誤した練習の成果が数値化ではっきりとわかる。データを活用できるというのは、考える力も養えておもしろいと思います」と話す。
近年は、少年野球の領域でもデータが活用され、パフォーマンスの最大化やけがをしないための球数なども数値化される。謝敷さんも「経験則に基づく指導が正しいか、間違っているかはともかく、少なくとも客観的な裏付けが求められるようになってきた」と話す。
データの活用に求められるのは、指導に対する意識改革だ。データや数値で根拠を示し、どうすれば改善できるかというアプローチが必要になるからだという。
謝敷さんはラボの活用などで、「感覚に頼った安易な指導がなくなっていくのではないか」と話す。
「僕自身も高校や大学までは、ヒットの延長がホームランだと思って練習をしていましたが、(社会人になってプレーした日本の)独立リーグで体の大きな選手と張り合うとき、ホームランは練習しないと打てないということを痛感させられました。ホームランを打つには、打球速度と角度が大事になってきます。それが、バレルゾーンへ打つという考えになってきます。
指導をするとき、『(打球の角度を)25度で打ってみて』『30度で打ってみて』と指導しても、実際の角度はデータをみないとわかりません。実際に、子どもたちがそういう感覚で打ったときの打球がどこまで飛んだかと、打ったときの角度がどうだったかが数値でわかるようになると、そのときの感覚を体で覚え込むことができるようになります」
指導の成果を実際に数値やデータで検証できることは、子どもたちにとってだけでなく、指導する側にもメリットがあるという。