2024年6月27日(木)

はじめまして、法学

2024年5月17日

「つき合うこと」と「結婚すること」の違い

 なぜ、結婚をしない人が増えているのでしょうか。たくさんの理由があるようです。それを調査・分析した書籍(研究論文なども含む)も多く存在します。「結婚しないのではなくて、できないのだ!」という悲痛な叫びも聞こえてきます。経済的に苦しいという理由や、結婚したくてもよきパートナーがいないという理由など……。

 しかし他方では、結婚しようと思えばできる環境だけれど、敢えてそれを選択しない人も少なくありません。独身の人は、時に、独身生活にそれなりのメリットを感じているようです。そして、そのメリットの大きな1つに、「束縛されずに済む」ことがあるようです。

 ここでいう「束縛」とは、おそらく、その大半は事実的なもの(1人の時間がとりにくくなる、稼いだお金の自由がきかなくなるなど)でしょう。しかし同時に、法的にも、結婚には、結構強い拘束性があります。

 そもそも、結婚(法律用語では「婚姻」)とは、男女が、継続的に生活上の結合を約束する身分的な契約です。結合するぶん、それはけっこう、拘束的です。

まず、夫婦は、同じ氏にしなければなりません(夫婦同姓。民法750条)*2
また、配偶者の血族とも親族関係が生まれます(姻族関係。民法725条)*3
お互い貞操義務を果たさなければなりません(民法770条1項1号)*4
同居し、協力し、扶助をしなければなりません(民法752条)*5
日常家事から発生する債務については、お互いが連帯して責任を負うことになります(民法761条)*6

 単につき合っているという状態とは異なる、法的拘束力の強い状態。これが結婚(法律婚)なのです。また、結婚は、「つき合う」というような純粋な私的関係ではなく、一種の公的関係といってもいいかもしれません。

 今お話しした、結婚に伴う法的な権利・義務の発生のほかにも、結婚をする際には、婚姻届を役所に提出して戸籍に登録する(いわゆる、入籍)などの手続が必要ですし、また、法が定めた結婚ができる要件を満たしていなければなりません。どんなに愛し合っていても、一定の近親者(たとえば、親と子、兄と妹など)の間では結婚ができませんし、また、中学生同士の結婚もできません。すなわち、結婚は、「つき合う」というレベルの純粋な精神的作用ではなく、社会的な制度なのです。

*2 【民法750条】夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

*3 【民法725条】次に掲げる者は、親族とする。
 1 六親等内の血族
 2 配偶者
 3 三親等内の姻族

*4 【民法770条】夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 1 配偶者に不貞な行為があったとき。(後略)

*5 【民法752条】夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

*6 【民法761条】夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。(後略)


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