2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年12月3日

 米国家安全保障庁(NSA)がメルケル独首相の携帯電話を盗聴していた疑惑、仏で大規模な電話傍受をしていた疑惑が浮上し、米欧間でNSAの盗聴やEメール監視が大きな問題となっています。

 この件に関して、ジョセフ・ヨッフェ、ディ・ツァイト誌編集長が10月24日付フィナンシャルタイムズ紙で、防諜措置をとるべきであると論じ、フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンは、10月25日付同紙で、どこまでスパイするかを改めて検討すべきである、と論じています。

 まず、ヨッフェの論旨は、次の通りです。

 すなわち、米国には今16の情報機関があるが、メルケル独首相がその盗聴の対象になり、ドイツは米国大使に抗議している。その直前、仏のルモンド紙は、NSAが仏で最近1月間に6200万の電話を傍受した、と報じた。

 欧州は、受け入れがたいと抗議しているが、行き過ぎではないか。西独のシュミット首相は、米国は彼のすべての電話を聞いている、と言っていた。

 仏の対外安全保障総局(GDES)はNSAと同じことをしている。英国では政府通信本部(GCHQ)はテムポラ・プログラムを実施している。ドイツはどうか。ドイツの情報機関BNDは冷戦後情報活動を全世界に広げておらず、他国と同じことを小規模にやっている。ドイツでは、プライバシー擁護の規則が英仏より厳しい。

 NSAは統制されていないといってよい。メルケルの携帯盗聴はほんの一部であり、3億2千万の米国人がプライバシーを侵害されている。米国人は、NSAが自分たちの自由への脅威だと考えた時に、初めてそれを統制するだろう。

 その間、我々は現実的になるべきだ。国家は敵も友人もスパイする。この脅威を封じ込めるには、不満を述べるよりも、防諜措置をとることが肝要である、と述べています。

 次に、ラックマンの論旨は、次の通りです。

 すなわち、米国にとり盗聴事件がもたらす短期的損害は深刻である。しかし長期的には利益があり得る。オバマは情報活動の範囲を再考する必要があると考え始めている。世界的スキャンダルは、オバマが情報機関の力を抑えるための、追い風となり得る。


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