2024年6月27日(木)

Wedge REPORT

2024年5月31日

英語版での配信でも

 両氏の指摘を裏付けるかのように、共同通信英語版の報道は日本語版以上に誤解を招く内容だった。“Japan minister queries women's worth without birth in election speech” (日本の大臣、選挙演説で出産のない女性の価値に疑問 ※Googleによる自動翻訳)と発信し、上川外相の発言撤回を報じるポストに至っては“Japan foreign minister retracts controversial childbirth remark”(日本の外相、物議を醸した出産発言を撤回)などと報じている。

 [childbirth]は一般的に「子どもを出産する」と翻訳され、地位や役職などを「生みだす」とは全く意味が異なる。上川外相は子どもの出産になど一切言及していない。共同通信のSNS(X)発信は大きな批判を呼び、いずれにもコミュニティポスト(誤情報や誤解を誘発する投稿にユーザーが補足や注意喚起を加える機能)が付けられている。

 なぜこのような報道をしたのか。同社は産経新聞からの取材に対し、「一連の発言は『出産』を比喩にしたものと考えられます。上川氏が『出産』と明示的に述べなかったとしても、発言の解釈として『childbirth』という表現を用いました」とコメントした。

 ならば何故、日本語版で当初「産む」と書いたものは後から修正、しかも敢えて「生む」ではなく平仮名で「うむ」にしたのか。加えて、英語版の[childbirth]を投稿したのは、日本語版が「うむ」に修正された後だ。いかなる「配慮」からか。

処理水問題でも見えたメディアの“印象操作”

 同様の問題は他にもある。昨夏に海洋放出が本格化した、多核種除去設備(ALPS)処理水(以下処理水)に対する共同通信の報道も見てみよう。同社は9月28日の英語記事で「Japan to begin releasing second batch of Fukushima water on Oct. 5」と報じた。

 処理水は通常、英語では「Treated water(処理された水)」と記載される。[Fukushima Water]という用語は、主に英語圏において福島へのデマや差別のミームとして使われてきた。昨年末に函館でイワシの大量死が発生した際にも、海外の投稿には[Fukushima Water]を含む投稿が溢れている

 上川外相の「生む」を敢えて[childbirth]と書いた共同通信は、いかなる「配慮」から敢えて[Fukushima Water]というネガティブなミームを用いて海外に発信したのか。ハフポスト日本の相本啓太記者が取材したところ、①社内ルールによる見出しの字数制限、②本文にはtreated radioactive waterと記載、③他の英文メディアでもそう表記している、が理由だという。

 なお[Treated Water]は12文字、[Fukushima Water]は14文字である。


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