特に、EUの結束という場合には、フランスとドイツが両輪となってリーダーシップをとるのが通常であるが、マクロンとショルツの間には、ウクライナ支援をめぐる不協和音が既にあり、それがマクロンのウクライナ駐留論で更に深刻化してしまった。マクロンが何を言ってもドイツ他EU諸国が付いていかないであろうし、フランスが率先して軍事面、経済面で実質的な措置を講ずることも、フランスの財政事情に鑑みれば難しいだろうとこの論説は見ている。
それでも、EUは協調の余地がある
確かに、マクロンの提唱したさまざまな措置を実現していくことは容易ではなく、欧州議会におけるポピュリストの台頭でEU自体が機能不全に陥る可能性もある。しかしそれ故に、EU強化という方向性は正しいものであり、外交に関するフランス大統領の権限は強力で、また他のEU加盟国にEUの将来ビジョンを提示する強い指導者がいるわけでもなく、結局、マクロンの諸提案を一つとしてEU委員会及び加盟国内の議論が進むのだろう。今後は、独仏両首脳が対ウクライナ支援に関する立場の違いを調整し関係修復ができるかにもよるだろう。ショルツは、ドイツも欧州が強固であり続けることを望んでおり、マクロンの演説にはそれを実現するための良いアイデアが含まれていると述べ、ウクライナに対する対応はともかく、EUの在り方については協調の余地がある。
そして、来年EU議長国となるポーランドは、ロシアの脅威をより身近に感じてドイツとの和解を進め、地政学的にEUを強化すべきだとのマクロンの主張に共鳴しており、イニシアチブを発揮する可能性もあろう。従って、この論説はマクロンの影響力についてやや過小評価に過ぎるようにも思う。