2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月5日

 欧州に消滅の危機が迫っているとのマクロンの発言について、ワシントン・ポスト紙の欧州担当コラムニストのホックステーダーが、2024年5月8日付の同紙で、メッセージは正しいがマクロンが言うのでは説得力がないと批判的に論評している。

「欧州は消滅の危機に直面する」とするフランスのマクロン大統領(代表撮影/ロイター/アフロ)

 マクロンは、欧州はロシアの侵略、米国の離反そして欧州経済の停滞と台頭するポピュリズムにより消滅の危機に直面していると警告した。欧州に関するマクロンの分析の重大さを否定することはできない。

 マクロンの問題は、演説の内容ではなく、メッセンジャーとしての資質にある。フランスの指導者とフランス自体ができることをやっていないのだ。7年を経過し、マクロンの国内外での信頼は低下している。

 欧州の苦難に対する彼の鋭い読みは現実に根ざしているが、その現実を自分の思う方向に変える彼の能力には疑問がある。一つは、マクロン自身が矛盾の塊である。

 マクロンは、防衛、金融、科学および気候変動対策において、欧州統合の強化を一貫して主張してきた。しかし、彼は、直近では、唐突に欧州のウクライナへの軍隊派遣を検討するよう呼びかけたように、ドイツとの関係を維持することに失敗している。

 彼は、自分の個人的な説得力によってプーチンにウクライナへの全面的な侵攻を中止させることができると考えていたが、ロシアを敗北させることでしかヨーロッパの安全保障を守ることはできないと主張するようになった。同時に、フランスは、ウクライナへの軍事援助としていくつかの重要なハードウェアは送っているが、全般的には遅れをとっている。


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