2024年6月23日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2024年6月14日

 フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのトニー・バーバーが、5月14日付け論説‘Defiant regional leaders resist the road map to EU membership’において、欧州連合(EU)は西バルカンなどへの拡大を目指しているが、セルビアやジョージアなど、地域の指導者にはEU加盟の進路を進むどころか、反対方向を指向する者があることを解説している。要旨は次の通り。

(Jacek Kadaj/gettyimages)

 昨年8月、欧州理事会議長のシャルル・ミシェルは、EUは2030年までには拡大の用意が整っているべきだと述べた。当時ですら、それは楽観的に聞こえた。

 今や、幾つかの加盟候補国は、加盟の基準を充たすどころか、反対方向を指し示す傾向を露わにしている。

 バルカンの加盟候補国は、アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ(但し、潜在的候補国)、モンテネグロ、北マケドニア、およびセルビアである。この他にジョージア、モルドバ、ウクライナも候補国である。トルコも少なくとも理論的には候補国である。

 加盟を申請する国は、自由な市場経済はもとより、民主主義、法の支配、EUの外交政策との整合性について、一定の基準を充たさねばならない。セルビアは、EU加盟の基準を意図的に充たさないことを選択した国の例である。

 5月7~8日、セルビアは習近平の訪問を得て、北京と「共に分ち合う将来(shared future)」の追求に合意した。また、ブチッチ大統領は新たな政府を任命したが、それにはロシアとの近さゆえに米国の制裁対象となっている2人の閣僚が含まれる。

 ブチッチの行動は是正されることはないだろう。実は、セルビアではEU加盟に対する支持は他のどのバルカンの候補国よりも低い。ブチッチは、ロシアと中国におもねる一方、EU加盟を支持しているように装い、一つの外国がもう一つの外国と争うように仕向けるというセルビアの伝統を演じている。

 北マケドニアでは、5月8日の大統領選挙と議会選挙で右派のナショナリストの勢力が勝ったことで、この国のEU加盟の展望は後退することとなった。北マケドニアの加盟条件の一つは言語、アイデンティティ、歴史に関連するブルガリアの諸々の要求を充たすことである。この国の新しい政府はこれらの譲歩に反対だ。

 ボスニアの民族別の政党の間の抗争は国の機関を麻痺させており、EU加盟には1992~95年の戦争当時からほとんど近づいていない。


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