ジョージアの独裁的指導者ビジナ・イワニシヴィリは極度に反民主主義の方向に動いた。その結果、5月14日、「外国のエージェント」に関するロシア流儀の法案が、大規模な街頭の抗議デモにもかかわらず、可決され、また、EUのルールと相容れない税制の変更が可決された。
EU拡大が困難に陥っているのは、この地域がロシアと中国の干渉に晒されていることもその理由である。しかし、幾つかの国がEU加盟あるいは加盟に必要とされる措置に疑念を抱く執拗な勢力に牛耳られていることが、もう一つの理由である。EUの民主主義の価値や経済支援ではこれら障害の克服には十分でないかも知れない。
* * *
EU加盟へ進まない各国の事情
EUが欧州の安全と繁栄のために拡大が望ましく必要と考えたことは正しい。しかし、意図的に加盟の可能性を破壊しかねない行動に出る国があろうと予期した向きはあまりなかったかも知れない。
5月8日の中国とセルビアの首脳の共同声明には、「新時代の未来を共有するセルビア・中国共同体の構築」に合意したとある。これはEUに対する決別の辞と読める。
また、セルビアは台湾に関する中国の立場をそのまま支持しており、武力統一も含めて支持しているとも受け取れる。EU加盟の展望はセルビアが中国に傾斜することの歯止めには何らなり得ていない。
両国は昨年10月に自由貿易協定(対象にミサイル、戦車、爆弾など武器も含まれている)に署名したが、共同声明はそれを履行すべきことを確認している。しかし、EUでは加盟国が独自に貿易協定を結ぶことはあり得ず、EUの制度と相容れない。
そもそも、セルビアはブチッチ大統領の強権的支配の下にあり、民主的制度が適正に機能しておらず、EUとは体質的に相容れない。ブチッチが本当にEU加盟を望んでいるのか疑問だ。EU加盟を支持している国民は33%にとどまるとの昨年6月の世論調査もある。
北マケドニアでは、5月8日の議会選挙と大統領選挙の結果、右派ナショナリストの政党VMROが勝利し政権が交代したが、同党の新大統領が12日の就任式で、国名を故意に「北マケドニア」ではなく「マケドニア」と呼んだ。国名の変更はギリシャがこの国を加盟候補国と認めるための条件であり、両国は18年に北マケドニアに改称することで合意したものである。
当時、稀な合意として国際的に称賛された経緯があるが、VMROはこの合意に反対して来た。ギリシャは強く反発している。