もう一つは、この論説にあるブルガリアの諸要求(ブルガリアは憲法を改正して北マケドニアにおけるブルガリア系少数民族の存在に言及することを要求している)である。これにもVMROは反対であり、恐らく、難航は必至である。
ジョージアの問題は、5月14日に与党「ジョージアの夢」が議会での採決を強行した「外国のエージェント」法である。この法案は、資金の20%超を外国に頼る市民団体とメディアに司法省に登録することを義務付けるものである。
この法案を主導した親露派のオリガルヒで「ジョージアの夢」の陰の指導者であるビジナ・イヴァニシヴィリの狙いは、クレムリンの手法に倣い、これを弾圧に用いて10月に予定される選挙を有利に展開するための布石であろうともみられ、これが市民の大規模な街頭の抗議運動を引き起こした。EUは、この法案はEUの中核的な規範と価値と相容れず、ジョージアのEU加盟の展望にとって脅威となることを警告しており、加盟プロセスは凍結されざるを得ないであろう。
それがむしろイヴァニシヴィリの狙いだったのではないかとの憶測もある。しかし、国民の89%はEU加盟支持である。
中国とロシアの影響だけではない
この論説は、西バルカンなどEUが拡大を目指す地域が殊更に難しい地域であることの理由として、ロシアと中国による干渉、およびEU加盟に疑念を抱く執拗な勢力の存在、の二つに末段で言及している。あえて追加すれば、西バルカンでは民族が複雑に入り組んでいるために、相互の善隣関係が殊更に難しいことがあろう。
EUは、西バルカンの諸国が加盟を達成する前でも、EUの恩恵を実感出来るよう、加盟に必要な改革を進める諸国に60億ユーロの投資資金を用意する計画を進めているが、どれほどの効果を持ち得るかは見通し難い。