この引き下げの対象の環境関連費用はエネルギー価格のうち112ポンドを占めているが、ミルバンド党首は、このうち60%は現連立政権が導入したものだと首相を非難した。また、連立相手の自由民主党からも、「保守党が環境政策に冷淡なことは分かっているが、政策のパニック的な逆戻りは許されない」との声が上がった。政権は112ポンドのうち約50ポンドを削減する意向であり、詳細は12月4日に発表予定のオズボーン財務大臣の秋の定例演説で触れられる予定だ。
さらにキャメロン首相は、エネルギー企業が顧客に提示する価格は最大でも4種類に限り、さらに各家庭に最安値になる料金を提示するように要請する意向だ。これに対し、競争の制限であり、自由化に反するとの批判があり、さらに、スマートメーター、電気自動車などと組み合わせた料金プランの提示が困難になり、新技術導入を阻害するとの声も出ている。
エネルギー企業に対し、デービー大臣は「顧客は、株主に高収益をもたらす金のなる木ではない。公共サービスを提供する企業では、業界は公に奉仕しなければならない」と述べているが、自由化した市場では企業は株主へのリターンも追及する必要がある。もし公共性が優先されるというならば、エネルギー市場を自由化すべきではなかったということだろう。英国電力自由化市場の問題については「電力自由化で『新たな総括原価主義』が必要に?温暖化対策進める英国のジレンマ」もお読み戴ければ幸甚です。
もともとエネルギー価格は安かった英国
真の問題は…
エネルギー価格上昇に悩む英国だが、欧州主要国のガス料金、電力料金と比較すると英国の料金は相対的に安い。また、最近の値上がり率も他欧州主要国と変わりはない。図‐1と図‐2が示す通りだ。議会が11月に発行したエネルギー価格に関するレポートでも、自由化以降、ガス・電力料金共に下落したが、2000年から04年頃を底に値上がりしていると指摘し、エネルギー貧困層も96年の650万世帯が03年には200万世帯に減少していると述べている。